過栄養内湾(洞海湾)における粒子状物質の生化学的特徴と鉛直輸送過程の季節変化
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概要
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過栄養内湾である洞海湾において季節毎に粒子状物質の採取を行い,その生化学的特徴から起源を推定した.また,有機態炭素やChlorophyll aを指標として粒子状物質の鉛直輸送過程の季節変化について考察した.その結果,過栄養化した内湾の見かけ上の沈降粒子束の多寡は,密度成層の強弱による海水の上下混合に支配されていることが確認された.水柱中に存在する懸濁粒子の主要な起源は植物プランクトンと推定されたが,セディメントトラップに捕集された粒子状物質に占める懸濁粒子由来の割合は有機態炭素を指標としたとき,約35%であった.有機態炭素を指標として水柱中の現存量と沈降除去量を比較検討したところ,以下の3パターンが存在した.(1)現存量は多いが成層期のためフラックスは小さい(夏季).(2)現存量は多くないが循環期のためフラックスは大きい(春季・秋季).(3)循環期だが沈降除去率が小さいためフラックスも小さい(冬季).また,植物プランクトンを主な起源とする粒子状物質の鉛直フラックスをChlorophyll aを指標として検討した結果,季節毎に変化する植物プランクトン量と密度成層の強弱との相互関係でフラックスは決まると考えられた.
- 2010-08-30
著者
-
門谷 茂
北海道大学大学院水産科学研究科
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門谷 茂
北海道大学大学院環境科学院
-
多田 邦尚
香川大学農学部
-
山田 真知子
福岡女子大学人間環境学部
-
山田 真知子
公立大学法人福岡女子大学人間環境学部
-
濱田 建一郎
公立大学法人北九州市立大学国際環境工学部
-
濱田 建一郎
北九州市立大学アクア研究センター
-
上田 直子
北九州市立大学大学院
-
門谷 茂
香川大農
-
上田 直子
公立大学法人北九州市立大学国際環境工学部
-
浜田 建一郎
北九州市環境科研
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