ベーリング海における溶存遊離アミノ酸の挙動と生物活動
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概要
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溶存遊離アミノ酸(DFAA)は,全溶存アミノ酸(DTAA)や溶存結合アミノ酸(DCAA)に比べて,その濃度や組成が変動しやすい成分である.ベーリング海の2観測点(St.1:57°59'N,178°26'E,St.5:61°43'N,174°32'E)でDFAAを測定した結果,全DFAA濃度はそれぞれ41-215nM,75-352nMであり,その鉛直分布はChl aの分布傾向とほぼ一致していた.また,そのアミノ酸組成については,オルニチンの相対組成比がSt.1において6-28%と大きく変動し,下層に向かって増加する傾向を示した.同時に生物量および生物活性の指標であるChl a,POC,PON,ATPの濃度およびそれらの濃度比を用いて現場の生物活動について推察した.その結果,アミノ酸濃度や組成の変動と現場の生物活性との関係については,ベーリング海は生物生産性が高いため,植物プランクトンのDFAAの排泄が水柱内のDFAAの主な供給源であると考えられた.一方,植物プランクトンのDFAAの供給よりも従属栄養微生物によるDFAAの分解・変質作用が卓越する層では,オルニチンの相対割合が高くなっていた.
- 日本海洋学会の論文
- 1992-02-29
著者
-
多田 邦尚
香川大学農学部
-
米田 義昭
北海道大学大学院水産科学研究科環境生物資源科学専攻
-
米田 義昭
北海道大学
-
多田 邦尚
香川大学農学部海洋資源化学研究室
-
米田 義昭
北海道大学水産学部北洋水産研究施設
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