海底近傍に着目した沿岸海洋観測における音響測深の問題と対策
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
海水中の音速は水温・塩分と圧力によって決まる。しかし,海洋観測の基本情報である水深の一般的な測定方法である音響測深では,通常,音速を一律に1500ms^<-1>として水深を決定しているために,必ずしも正しい水深を得ているわけではない。この曖昧さが,「海底からの高さ」が重要な沿岸海域における海底近傍の研究の大きな障害になっているものと思われる。本稿では,音速を利用した音響測深機の水深測定と圧力を利用したCTD(多筒採水器を含む)の深度測定,各々の誤差をT-Sダイアグラム上に示して両者の大きさを比較し,音響測深機は必ずしも正確に測深していないことを明らかにした。すなわち,水温0-25℃塩分25-35の範囲では,CTDの深度測定誤差が1%未満であるのに対して,音響測深機の水深測定誤差は最大4%に達する。例えば,簡単のため水深100mで鉛直的に均質な水柱を考えると,海底近傍ではCTDの深度測定誤差が採水器の長さ程度の1m以内であるのに対して,音響測深機の水深測定誤差は最大4mに相当し,音響測深機による水深を基にして海底からの高さを正確に把握した観測を行うことの難しさを示している。その対策として,着底させることで不確かな水深測定に関係なく海底直近までの機器測定と,正確な高さでの採水が行える海底直上採水システムを提案し,その概略を紹介した。また,試験運用結果から,この方法によって観測することができた海底近傍における濁度・溶存態無機窒素・溶存酸素濃度の急勾配の変化の一例を示した。
- 2013-09-15
著者
関連論文
- 沿岸海域における物質循環に対する干潟の機能
- 干潟底生生態系の季節変動に関する数値モデル
- 瀬戸内海生態系を対象とする底生微細藻類研究の経過と今後の課題(シンポジウム:浅海域生態系における底生微細藻の役割)
- 陸域からの栄養塩負荷量の増加に起因しない有明海奥部における大規模赤潮の発生メカニズム
- 噴火湾湾口付近で観測された慣性振動流の解析
- 夏季噴火湾における流動構造とその変動
- 夏季の過栄養内湾(洞海湾)における生化学的キャラクターから見た粒子状物質の起源と低次生産過程
- 熱帯・亜熱帯性海産珪藻Skeletonena tropicumの温帯域内湾(洞海湾)における生存戦略
- シンポジウム「沿岸海洋学からみた有明海問題」のまとめ (シンポジウム:沿岸海洋学からみた有明海問題)
- 感潮河川(北九州市紫川)の高濁度域における懸濁粒子の起源
- 洞海湾で鞭毛藻類が大増殖しない理由
- 過栄養海域(北九州市・洞海湾)における表層水中の細菌分布
- 有明海奥部における夏季の貧酸素水発生域の拡大とそのメカニズム
- 有明海奥部海域における近年の貧酸素水塊および赤潮発生と海洋構造の関係
- 藻類増殖用水溶性ガラスを用いた珪藻 Chaetoceros gracilis の簡易な半連続培養システムの開発
- アコヤガイのリハビリテーションのための珪藻類給餌システムの開発
- 二枚貝への餌料供給システムの開発
- 富栄養海域(北九州市・洞海湾)における植物プランクトンの高アンモニア濃度に対する耐性
- はじめに
- 広域定期観測による有明海水環境の現状(シンポジウム:沿岸海洋学からみた有明海問題)
- 洞海湾の河口循環流と赤潮形成(シンポジウム:内湾環境における河口循環流の役割)
- 冬季の噴火湾における季節風による湾内の循環について
- 噴火湾における親潮流入期のADCPによる流れの観測(北太平洋北西部とその縁辺海の水塊変動と循環)(平成12年度共同利用研究集会講演要旨)
- シンポジウム「沿岸海洋学からみた有明海問題」のまとめ(シンポジウム:沿岸海洋学からみた有明海問題)
- A255 サロマ湖におけるシケの効用 : 再懸濁による堆積物表層の上方輸送(スペシャルセッション「産業と気象〜気象情報・技術の産業への寄与を考える〜」)
- 新川・春日川河口干潟域(瀬戸内海播磨灘)に生息する底生微細藻類の増殖ポテンシャル
- ハマチ Sariola quinqueradiata 養殖場における沈降粒子束
- 沿岸浅海底に生息する懸濁物食性二枚貝類の食物資源の利用性
- 瀬戸内海の生物生産に果たす陸起源のリン・窒素の役割(シンポジウム:沿岸海域に存在する外洋起源のリン・窒素)
- 無(貧)酸素環境下における植物プランクトン群集の応答 (総特集 現在と過去の無(貧)酸素環境(下)比較研究の必要性)
- 干潟域の生物生産 : 低次から高次へ(ミニシンポジウム : 干潟域の一次生産者 : その生態と機能)
- 餌料供給システムを用いたアコヤガイのへい死低減実験
- 砂質干潟域における環境と物質循環系
- 緑川河口干潟における盛砂後のアサリ (Ruditapes philippinarum) の個体群動態
- GPS漂流ブイを用いた表層流観察
- 亜寒帯汽水湖の火散布沼(北海道)における栄養塩の時空間分布とその起源
- 緑川河口干潟における盛砂後のアサリ (Ruditapes philippinarum) の個体群動態
- 酪農業の進展と風蓮湖の生物生産構造変化[含 質疑応答] (シンポジウム 北海道オホーツク海沿岸域と道東汽水湖群の海洋構造と生物生産過程)
- 春季および初夏の根室湾における海水の鉛直輸送
- 亜寒帯汽水湖の火散布沼 (北海道) における栄養塩の時空間分布とその起源
- 瀬戸内海引田湾における有害赤潮鞭毛藻 Karenia mikimotoi (渦鞭毛藻)の赤潮発生年と非発生年の海域環境の比較
- GPS漂流ブイを用いた風蓮湖における表層流観察
- 新川・春日川河口干潟域(瀬戸内海備讃瀬戸)におけるリンの収支
- 過栄養内湾(洞海湾)における粒子状物質の生化学的特徴と鉛直輸送過程の季節変化
- 栄養塩濃度が大幅に減少した洞海湾の貧酸素水塊と低次生産過程について(シンポジウム:沿岸海域の貧酸素化)
- シンポジウム「北海道オホーツク海沿岸域と道東汽水湖群の海洋構造と生物生産過程」のまとめ(シンポジウム:北海道オホーツク海沿岸域と道東汽水湖群の海洋構造と生物生産過程)
- 酪農業の進展と風蓮湖の生物生産構造変化(シンポジウム:北海道オホーツク海沿岸域と道東汽水湖群の海洋構造と生物生産過程)
- 海底近傍に着目した沿岸海洋観測における音響測深の問題と対策