瀬戸内海・周防灘における夏季のリンの分布と生物生産環境
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概要
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瀬戸内海西部に位置する周防灘の低次生物生産機構を明らかにするために,夏季に定線観測と鉛直的な採水および採泥を行い,水柱と堆積物におけるリンの分布を調べた.夏季の周防灘ではリン酸塩と懸濁態リンの分布は密度躍層の存在に支配されており,上層側に比べて下層側で濃度が高かった.この傾向はクロロフィルa(Chl.a)についても同様であり,水深15m前後の浅い海域では光および栄養塩による一次生産環境は,密度躍層の下層側,とくに底層付近で相対的に優れていることが示唆された.堆積物中の全リン含有量と既往の堆積速度から,生物生産活動を介して堆積物へ移行するリンの量を試算した結果,灘全体での堆積量は4.4t-P/dayとなった.この値は河川からのリンの流入量と同程度であり,周防灘では淡水とリンの挙動が大きく異なることが示唆された.また,定常状態を仮定した場合,灘全体でのリンの堆積量を説明するためは,河川からのリンの供給量だけでは難しく,海水交換を通じて周防灘にリンが補給されている可能性が示唆された.リンの循環とChl.aの分布からみた周防灘の低次生物生産環境は,プランクトン生態系のみが卓越する大阪湾とは対照的である.また,プランクトン生産が相対的に底生生物生産に転送され易い特徴を備えていると考えられた.
- 日本海洋学会の論文
- 2002-02-22
著者
-
堤 裕昭
熊本県立大学環境共生学部
-
門谷 茂
北海道大学大学院環境科学院
-
門谷 茂
香川大学農学部
-
濱田 健一郎
北九州市立大学アクア研究センター
-
濱田 建一郎
公立大学法人北九州市立大学国際環境工学部
-
濱田 建一郎
北九州市環境科学研究所
-
上田 直子
北九州市環境科学研究所アクア研究センター
-
堤 裕昭
熊本県立大
-
Tsutsumi Hiroaki
Faculty Of Environmental And Symbiotic Sciences Prefectural University Of Kumamoto
-
山口 一岩
香川大学農学部
-
山口 一岩
愛媛大学沿岸環境科学研究センター環境動態解析分野:(現)岡山理科大学工学部人間環境科学研究室
-
上田 直子
公立大学法人北九州市立大学国際環境工学部
-
浜田 建一郎
北九州市環境科研
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