大型珪藻Coscinodiscus wailesiiの沈降に伴う生元素の鉛直輸送と沿岸海域の栄養塩環境への影響
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概要
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瀬戸内海東部に位置する志度湾においてセジメントトラップ実験を実施して,低水温期におけるCoscinodiscus wailesiiの沈降量を継続的に測定すると共に,本種の沈降による生元素の鉛直輸送について調査,研究を行った.また同海域の栄養塩濃度変化を測定し,本種の沈降量との関係についても考察した.観測期間中,C.wailesiiの沈降量は4.3×10^3〜1.6×10^5cells/m^2/dayの間で変動し,最大沈降量が見られたのはDINが2μM以下まで,Si(OH)_4が3μM以下まで低下した2003年1月24日であった.本種の沈降量とDIN及びSi(OH)_4濃度の間には有意な負の相関関係が見られた.このことからC.wailesiiの沈降は栄養塩制限によって促進されたと考えられる.本種は大型で栄養要求性も高いため,その沈降速度も半飽和定数も他の珪藻類に比べて高い.そのため,他の珪藻類よりも高い栄養塩濃度下で栄養塩制限を受け,もともと速い沈降速度がさらに加速されることになる.セジメントトラップ実験の結果から本種がその細胞の形で底層へ輸送したと考えられるNとSi量は,同期間中に水柱内から消失したN,Si量に対して生細胞のみで見積もった場合は6,21%に相当し,生細胞+死細胞で見積もった場合には24,80%に相当した.このようにC.wailesiiが低水温期において底層へ輸送する生元素量は膨大で,本種は沿岸海域の物質循環過程に大きな影響を及ぼしていることが定量的に明らかとなった.また,Si含有率の高いC.wailesii細胞が多量に増殖し,沈降することによって海水中のSi(OH)_4:DINが低下し,鞭毛藻類が優占しやすい環境が生まれる可能性が考えられた.
- 2009-02-27
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