乳児期の絵本場面における母子の共同注意の指さしをめぐる発達的変化 : 積木場面との比較による縦断研究
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概要
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本研究では,乳児期の絵本場面における母子の共同注意の指さしの発達的変化を,積木場面と比較し明らかにすることを目的とした。20組の母子を対象とし,1歳半,2歳半,3歳時期にわたる家庭での観察による縦断研究を実施した。主な結果は次の通りである。(1)絵本場面での母子相互作用は,指さし生起頻度の指標を用いて積木場面と比較すると,頻繁になされていることが示された。(2)絵本場面で子どもの指さしは,1歳半,2歳半から3歳時期へ,発話を伴うことで減少することが示された。このことは,幼児期(3歳〜6歳)に,子どもの指さしが消失していく傾向を示した絵本場面研究へ一つの見通しを与えることが示唆された。一方積木場面では,子どもの指さしが1歳半から2歳半,3歳時期へ発話を伴いながら増加していくことが示され,絵本場面とは異なる発達的変化が示唆された。絵本場面では,より幼い1歳半時期に,子どもが発話を伴わずに指さした時でも,母親と頻繁に共同活動を展開していくことが特徴としてみいだされた。(3)絵本場面での母子の指さし対象は,絵本の挿絵と文字に加え,周囲の実物にも及ぶことがみいだされた。これらの対象を中心とした共同活動の時期別特徴が示され,絵本だけでなく,現実世界の実物へも注意を向け合い,共同活動を展開していることが示唆された。以上,積木場面との比較から,絵本場面での母子の共同注意の指さしの発達的変化の特徴が示された。
- 2010-03-20
著者
-
秋田 喜代美
東京大学
-
菅井 洋子
日本女子大学大学院人間生活学研究科
-
菅井 洋子
日本女子大学大学院人間生活学研究科:(現)東京大学大学院教育学研究科
-
秋田 喜代美
東京大学大学院教育学研究科
-
横山 真貴子
奈良教育大学教育学部
-
野澤 祥子
東京大学大学院教育学研究科
-
秋田 喜代美
東京大学大学院教育学研究科附属学校臨床総合教育研究センター
-
秋田 喜代美
東京大学大学院
-
横山 真貴子
奈良教育大学
-
秋田 喜代美
教育心理学研究
-
菅井 洋子
日本女子大学大学院
-
秋田 喜代美
東京大学教育学部
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