スパイク金具による枝打作業とその功程
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概要
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この功程計算は,立木1,000本がI,II,III別に胸高直径が正規分布し,それぞれの胸高直径別に枝下高が正規分布し,さらに各枝下高についても枝の本数が正規分布するものとして計算している。各径級に対する枝下高および枝本数については,平均値,標準偏差は,悉皆調査(立木全部について)からの実測値である。立木群の径級,枝下高および枝本数に対するこのような想定は,急速な発展をとげつつある林木測定法の見地からすれば,余りにも単純な構成であろう。しかしたとえば,伐木造材作業に関する功程表のほとんどが取扱っているように,事業現場において任意の胸高直径,樹高,歩止りの林木が,1本1本,伐木造材されるのを時間観測しておいて,その後で正確な収穫調査の結果から調整できるものと異なり,枝打ちすべき林分は,収穫を数年または数10年の後にするものであるから,いかに人工林といえども,同一直径,同一樹高(同一枝下高),同一枝数という林木集団を望めない現実林を対象とする場合,収穫功程表と同一の取扱いをすることは困難である。また枝打作業を実施するに先立ち,正確な林分調査を行なったのち,供用人員数を決定するのも,枝打功程を把握するという本来の目的に対しては若干歪んだものとなるであろう。そこでやむをえず想定した処理法が,前述の正規分布の想定である。そこで,ここでは一応,平均胸高直径12〜14cm=13cmの林分で,1ha当り1,000本,胸高直径の標準偏差をそれぞれ2,3および5と3の段階を想定し,そのおのおのの場合における径級別の立木本数,枝下高および枝本数の正規分布として所要時間を計算している。その結果は,第15表,第16表および第17表に示すとおりである。第15表 生長成績I,立木1000本,平均胸高直径12〜14cmの林分における径級別枝下高別の枝打所要時間(分)[table]第16表生長成績II,立木1000本,平均胸高直径12〜14cmの林分における径級別枝下高別の枝打所要時間(分)[table]第17表生長成績III,立木1000本,平均胸高直径12〜14cmの林分における径級別枝下高別の枝打所要時間(分)[table]スパイク金具による枝打作業の余裕率および準備後仕末が,第2表に示すとおり平均25.41%であるから,実働時間よ,48分中,約357分となる。このような速度で作業か施行されたとして,1ha当り1,000本,胸高直径平均12〜14cm,生長成績Iの林分を1人の作業者で枝打ちしたとすれば,下記の式に示すとおり,約13日が費されることになる。[4471.13分+177.78分:移動時間]÷357分=13.0日同様に,II,IIIの成長成績の林分では,それぞれ17.1日,13.2日となる。これがたとえば2,500本/haであるとすれば,Iの場合(2.5×4471.13+277.78)÷357≒32日となる。おおむね枝打作業の対象となるヒノキ林は,15〜25年生位と大雑把に仮定しても,その胸高直径の平均は8〜18cm程度であろうから,いままでに述べたような正規分布の考え方を適用して,各胸乱直径平均別の立木正規分布(1,000本/ha,2,000本/ha,2,500本/haおよび3,000/ha)を想定し,立木分布表および功程表を作製することができるのではあるまいか。つぎに,枝下高および枝本数と枝打所要時間との関係は,かなり安定した相関関係があり,本調査でえた結果についていえば,径級10cm,12cmおよび14cmにおける枝打所要時間,枝下高および枝本数との回帰式間には有意差が認められなかったし,また作業者の個人差(技能,年令,経験年数)も認められなかったので,このスパイク金具の使用は,功程計算という点からも,きわめて好都合であると判断される。
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