耕作放棄水田跡地放牧牛における社会行動と尿中コルチゾール濃度
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概要
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耕作放棄地における放牧利用が全国的に推進されている。しかし、耕作放棄地における狭小面積・少頭数が放牧牛の行動やストレス反応へ与える影響は不明である。そこで、本研究では耕作放棄水田跡地放牧が、放牧牛の社会行動および尿中コルチゾール濃度に与える影響を明らかとすることを目的とした。耕作放棄水田跡地として、耕作放棄水田跡地2ヵ所(水田区: 3,673m^2および4,067m^2)、大面積・多頭数放牧地として岩手大学農学部附属寒冷FSC御明神牧場(大面積区: 22,678m^2)を調査地とした。水田区では黒毛和種繁殖牛または日本短角種繁殖牛2頭を放牧し(水田区A: 2004年5月21日-6月22日、7月28日-9月6日、水田区B: 6月24日-7月23日、8月27日-10月8日)、調査牛とした。大面積区では黒毛和種繁殖牛を含む計16〜29頭を放牧し(2004年5月31日-6月15日、8月5日-20日)、そのうち3頭を調査牛とした。行動調査は各放牧期間の初期および後期の4:00-18:00に行った。社会行動は連続観察により、それ以外の行動は1分毎のタイムサンプリングにより記録した。各行動調査の前後数日以内に1回、加えて退牧後に1回、調査対象牛の尿を採取し、尿中コルチゾール濃度を測定した。社会行動対象牛1頭あたりの親和行動の出現数は、水田区で大面積区より多かった(P<0.05)。親和行動以外の行動は両区間に差はなかった。退牧後の尿中コルチゾール濃度は、両区において差はなく、基礎値は同等であると考えられた。放牧初期の尿中コルチゾール濃度は、水田区において大面積区よりも有意に高かったが(P<0.05)、後期には差は認められなかった。水田跡地周囲では一般車両が頻繁に往来していた。少頭数での放牧であったことに加え、このような水田跡地の外部環境が、放牧初期のコルチゾール濃度を高めた一因として考えられる。しかしながら、放牧後期にはウシが環境に順応した可能性が考えられた。以上のことから、同一農家のウシを組み合わせた耕作放棄水田跡地放牧による、行動面・生理面に対する影響はないと判断される。
- 2007-12-25
著者
-
出口 善隆
岩手大学農学部
-
東山 由美
東北農業研究センター
-
成田 大展
東北農業研究センター
-
梨木 守
東北農業研究センター
-
川崎 光代
東北農業研究センター
-
荒川 亜矢子
岩手大学農学部
-
平田 統一
岩手大学農学部
-
梨木 守
畜産草地研究所
-
出口 善隆
岩手大農
-
梨木 守
農林水産省東北農業試験場
-
出口 善隆
東北大学大学院農学研究科陸圏修復生態学
-
出口 善隆
岩手大学大学院連合農学研究科
-
成田 大展
東北大学大学院農学研究科陸圏修復生態学
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