薩摩半島南部に発生した茶の細菌性病害について
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概要
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本実験は, 薩摩半島南部(鹿児島県揖宿郡頴娃町)で発生した細菌性病害の原因を調べたものである.得られた結果を要約すると以下のとおりである.1.本病は, 鹿児島県下で1975年3月に始めて認められ, その後, 毎年発生が確認されている.病徴は比較的若い葉および新梢に顕著に現われ, 中肋あるいは葉脈に沿って拡大する.この病斑はやがて暗黒色に変じ, いわゆるえそ症状となる.新梢では, 初め円形ないし楕円形の水浸状, 暗緑色病斑が認められ, 次第に拡大し褐変する.本症状は春期に最も顕著で, 秋期がこれに次ぎ, 夏期, 冬期には, 病徴の進展が止まることが多い.2.罹病葉より, 常法により細菌の分離をすると, 高頻度で白色コロニーの細菌が分離され, 茶樹に付傷接種すると容易に発病が認められた.接種後1週間以内で原病徴を再現し, 病斑部分より同種の細菌が再分離された.3.病原細菌の形態, 培養的性質, 生理的性質を調べた.本菌は, 大きさ1.1〜2.2×0.3〜0.7μm(平均1.7×0.5μm)の桿菌で, 1〜7本のべん毛を単極あるいは両極よりだしていた.グラム陰性である.ブイヨン, PDA寒天平面でともに白色円形コロニーを形成した.ペプトン水, フェルミ氏液, ウシンスキー氏液で生育良好であり, コーン氏液では生育しなかった.螢光色素の産生は認められなかった.ゼラチンを液化し, エスクリンを加水分解しなかった.グルコース, サッカロース, マンニットを好気的に酸化し, ラクトース, エタノール, フェノールを酸化しなかった.カタラーゼ, リパーゼの産生が認められ, インドール, 硫化水素を産生しなかった.無機窒素を利用し, ペプトンよりアンモニアを産生した.硝酸塩を還元せず, メチレンブルー, リトマスを還元した.メチルレッド試験, V-P試験, Thornleyのアルギニン試験はいずれも陰性であった.抗生物質に対しては, テトラサイクリン, クロラムフェニコール, エリスロマイシン, ジヒドロストレプトマイシンなどに感受性で, ペニシリンには耐性を示した.これらの結果は対照菌として用いたPseudomonas theaeと酷似していた.以上の結果より, 本症状はPseudomonas theae Okabe et M.Gotoによる「チャ赤焼病」と同定された.
- 鹿児島大学の論文
- 1979-03-19
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