茶の天狗巣病に関する研究 : II.罹病組織汁液による茶樹への各種の接種試験
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概要
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1)本報告は, 茶の天狗巣病罹病組織汁液を用いたいくつかの接種試験の結果をとりまとめたものである.2)汁液接種の方法と発病との関係をしらべた(第1表)結果, 腋芽基部に注射針で汁液を注入する方法が最も高い発病率を示し, 針接種後, その部分を汁液を含ませた脱脂綿でまき, さらにその上をポリエチレンテーフで被覆した方法もほぼ同程度の発病率を示した.また茶樹全体に汁液を散布した場合, 傷をつけた茶樹では多くの発病が認められたが, 無傷の茶樹ではほとんど発病がみられなかった.3)汁液接種を行なう場合の接種部位と発病との関係をしらべた(第2表).その結果, 葉への接種では発病がみられなかったが, 腋芽基部および新梢節間部への針接種, 新梢および太い枝の切断部への汁液塗布によって発病することが認められた.4)古いえい瘤, 肥大新梢, 罹病葉などから汁液をとって, 接種試験を行なった(第3表)ところ, 肥大新梢の汁液を接種した場合には多数の発病が認められたが, 罹病葉と古いえい瘤の汁液ではわずかの発病しかみられなかった.5)接種時期と発病との関係をしらべた(第4表, 第5表, 第1図).その結果, 11〜12月接種が最も発病率が高く, 10月, 1月接種がこれにつづき, 3〜4月接種ではごくわずかしか発病しなかった.また5〜8月接種では発病が全く認められなかった.6)種々の処理を加えた罹病組織汁液を用いて接種試験を行なった(第6表).その結果, 滅菌用フィルターを用いたザイツ濾過器の透過液, 0.45μのミリポアフィルターの透過液, 75〜80℃で20分間加熱した汁液および昇汞を1000ppmの割合いで添加した汁液では発病が全く認められなかった.7)挿穂に汁液接種を行ない, 接種したのち苗床に挿した(第8表)ところ, 腋芽基部に接種針および注射針で接種したものに10%弱の発病がみられた.8)挿穂に汁液接種を行ない, 4日間種々な温度に保ったのち挿木を行なった(第9表)ところ, 5〜7℃区と10℃区では高い発病率を示したが, 15〜25℃の各区では発病率がかなり低下し, 30℃以上の区では発病が全く認められなかった.9)以上の結果から, 汁液接種試験は, 挿穂の腋芽基部に注射針接種を行ない, 10℃で4日間保ったのち挿木を行なうのが最も簡便で有効な方法であると思われる.また本病の感染には傷と低温が大きく関与していることが明らかになった.
- 鹿児島大学の論文
- 1971-09-25
著者
-
植原 一雄
植物病理学研究室
-
野中 寿之
鹿児島県茶業試験場
-
植原 一雄
Laboratory of Plant Pathology
-
野中 寿之
鹿児島県茶業試
-
河鍋 征人
Laboratory Of Plant Pathology
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