走査電顕による数種うどんこ病菌の無蒸着観察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本実験は自然発病した数種うどんこ病菌を無固定, 無蒸着により走査電顕で観察したものである.また2〜3の菌については, グルタルアルデヒドやOsO_4で固定後, 脱水, 乾燥, 金属蒸着した.供試した材料は11種の植物に寄生する4属7種である.すなわち, エンバクうどんこ病菌(Erysiphe graminis f.sp.avenae), タバコ, オオバコうどんこ病菌(E.cichoracearum), ゴボウ, キュウリ, メロン, カボチャうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea), セイヨウバラうどんこ病菌(S.pannosa), マサキうどんこ病菌(Microsphaera euonymi-japonicae), クコうどんこ病菌(M.lycii), サルスベリうどんこ病菌(Uncinula australiana)の自然発病葉を用いた.得られた結果を要約すると以下のとおりである.1.生葉を無固定, 無蒸着で観察した結果, 菌糸, 付着器, 分生子梗, 分生胞子などがあまり変形せずに認められた.すなわち分生子梗は菌糸よりほぼ直角に分岐し, その先端に楕円形の分生胞子が単生あるいは鎖生状に着生していることが確められた.とくに, セイヨウバラやサルスベリのうどんこ病菌では分生子梗の分岐状態, 隔膜の有無, 胞子の着生が明瞭に認められた.エンバクうどんこ病菌では, 葉表面の葉脈を横断するように菌糸が伸長しており, 葉の凸出部に付着器が認められた.3.グルタルアルデヒド固定・臨界点乾燥したものは, 菌糸の変形もあまりなく, 自然状態に近いと思われる像が観察された.しかしながら胞子の脱落が顕著で, 胞子は20〜30%収縮していた.4.OsO_4蒸気固定, 自然乾燥したものは, いずれも分生子梗や胞子が変形しており, 実用にはならなかった.5.無蒸着試料と, Pt-Pd, C-Auなどの金属を加熱蒸着したものの像質を比較観察したが, 本実験で用いた倍率(主として300〜500倍)では, ほとんど同じで, 金属蒸着しなくても観察には十分であった.以上の結果から, 走査電顕による無固定, 無蒸着観察は, 宿主植物葉上のうどんこ病菌の生育過程, 胞子などの着生状態を知るには簡便な方法であることが確かめられた.
- 鹿児島大学の論文
- 1977-03-19
著者
関連論文
- カナリーヤシの立枯病
- (10) チャかいよう病ならびに赤焼病罹病組織の走査電顕観察 (九州部会講演要旨)
- チャ赤焼病病原細菌のファージについて
- 茶かいよう病(新病害)とその病原細菌
- (15) チャ赤焼病病原細菌のファージについて (九州部会講演要旨)
- 茶天狗巣病に関する研究 : III.病原細菌の分離と同定
- 薩摩半島南部に発生した茶の細菌性病害について
- (4) 薩摩半島南部に発生したチャの細菌性病害の病原について (昭和53年度地域部会講演要旨(九州部会))
- (3) 薩摩半島南部に発生したチヤの細菌性病害について : 発生状況ならびに病徴 (昭和53年度地域部会講演要旨(九州部会))
- (185) チャ・かいよう病の電顕観察 (昭和52年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (5) チャ・かいよう病(新称)の病原について (昭和51年度地域部会講演要旨(九州部会))
- (22) チャ輪紋葉枯病に関する研究 : 3.病原菌の形態と若干の性質について (九州部会講演要旨)
- (21) チャ輪紋葉枯病に関する研究 : 2.発病条件について (九州部会講演要旨)
- (20) チャ輪紋葉枯病(新病害)に関する研究 : 1.発生状況, 病徴および病原菌の分離について (九州部会講演要旨)
- (9) かいよう症状を呈するチヤの新病害について (九州部会講演要旨)
- (8) チャてんぐ巣病に関する研究 IV.病原細菌について (九州部会講演要旨)
- 種子島に発生したサトウキビ白葉病
- チャ輪紋葉枯病菌のキノコ状菌体の形成におよぼす2,3の要因ならびに形成過程
- チャかいよう病罹病葉組織の電子顕微鏡観察
- サトウキビ黒穂病罹病組織の電子顕微鏡観察
- (21) サトウキビ黒穂病罹病茎の解剖学的観察 (III) (九州部会講演要旨)
- サトウキビ黒穂病罹病茎の解剖学的観察-3-厚膜胞子の形成過程
- (3) サトウキビ黒穂病罹病組織の電顕観察 (九州部会講演要旨)
- (5) チャてんぐ巣病に関する研究 : 病原細菌の産生する生長促進物質について (昭和53年度地域部会講演要旨(九州部会))
- 走査電顕による数種うどんこ病菌の無蒸着観察
- (10) 走査電顕による数種うどんこ病菌の無蒸着観察 (昭和51年度地域部会講演要旨(九州部会))
- (7) カナリーヤシの立枯病 (新称) について (昭和50年度地域部会講演要旨(九州部会))
- 白絹病菌の菌核形成に及ぼす光の影響
- (7) チャてんぐ巣病に関する研究 : III. 感染条件についての若干の知見 (九州部会講演要旨)
- 茶の天狗巣病に関する研究 : II.罹病組織汁液による茶樹への各種の接種試験
- (4) チャのてんぐ巣病に関する研究 : II. 罹病組織汁液によるチャ樹への各種の接種試験 (九州部会講演要旨)
- 茶の天狗巣病に関する研究 : I.発生の状況, 病徴およびその他の2,3の知見について
- (3) チャの天狗巣病に関する研究(予報) (九州部会講演要旨)
- 連作土壌に栽培したエンドウの根の褐変について
- (15) チャ輪紋葉枯病に関する研究 : 4.病原菌の産生する有機酸について (九州部会講演要旨)
- エンドウ連作圃場と非連作圃場における根圏微生物密度の比較
- 水稲とイネ白葉枯病菌との相互反応によって生成される phytoalexin について
- 白絹病菌によるイポメアマロンの不活性化