サトウキビ黒穂病罹病組織の電子顕微鏡観察
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概要
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本実験は, 黒穂病菌に感染したサトウキビ組織内の菌糸の所在ならびに胞子形成過程を走査型および透過型電顕で観察したものである.観察には, 罹病茎の分裂組織および罹病茎より出る鞭状物を用いた.得られた結果を要約すると以下のとおりである.菌糸は, 罹病茎の分裂組織に侵入していた.その侵入部位は, 主として宿主細胞の細胞壁と細胞膜との間で時には細胞壁中層にも認められた.このような組織では, 菌糸が見出される頻度は低かったが, 鞭状物基部では, 比較的容易に観察された.菌糸の微細構造は, 外層が, 電子密度の異なる2層の細胞壁と細胞膜からなり, 内部にリボツーム様顆粒, 液胞, 膜状構造物, 核などか認められた.その太さは0.8〜3.5μmで, 2μm前後のものが多かった.菌糸が認められる組織の周辺の宿主細胞には, 特に顕著な形態的変化は認められなかった.鞭状物を基部より先端にむけて観察すると, 菌糸量が次第に多くなる傾向になり, 菌糸が分枝している状態が観察された.分枝した菌糸のTEM像では, 細胞壁の電子密度が若干変り, 核が明瞭に認められた.時間の経過とともに, 菌糸の分枝が盛んとなるようで, これらが束状の菌糸集団となり, 菌糸塊を形成することを示唆する像が得られた.菌糸塊の大きさは, 数十から数百μmで, 時には数mmのものが観察された.これらの菌糸塊は, 概して, 鞭状物の表層に近い皮層部分に観察された.形成初期と思われる菌糸塊は, 単なる菌糸の集団として観察されたが, やや成熟したと思われる菌糸塊の内部はamorphousな状態で, その部分には, 境界のはっきりしない菌糸で充満していた.さらに成熟したと思われる菌糸塊の内部では, 境界のはっきりした.短桿状の菌糸細片で充満しているのが観察された.また, 菌糸塊によっては, この細片よりも丸く, 時には針状の突起を持った球形のものが多数充満していた.これらは, 5〜8μmの大きさで, その形態から黒穂胞子と思われた.
- 鹿児島大学の論文
- 1982-03-19
著者
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