海亀卵白の蛋白質に関する研究 : (第2報) 新タイプの蛋白質"ST-オボアルブミン"の化学的性質および組成について
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概要
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前報において, イオン交換セルロースに対し特異なクロマトグラフ挙動を示す新しいタイプの海亀オボアルブミン(ST-オボアルブミン)を見出した.このST-オボアルブミンの挙動は家禽のオボアルブミンの挙動とは明らかに異なっていた.そこで, ST-オボアルブミンを塩析法とCM-セルロースカラムクロマトグラフィーを行なうことにより, 純粋に分離し, その化学的性質並びに組成を詳細に調べた.その結果を要約すれば次の通りである.1)ST-オボアルブミンは等電点が5.6近傍にあったが, CM-セルロースに吸着されず, DEAE-セルロースに吸着されること, また, 滴定曲線から酸吸収はほとんどなく, 塩基の吸収が多いことなどから, ST-オボアルブミン分子中ではアミノ基は内部に埋没し, カルボキシル基は表面に露出し, そのほとんどは遊離状態であると推定した.2)ST-オボアルブミンの分子量は400000以上と推定された.なお, 尿素, EDTA-尿素処理およびチオール化合物による還元を行なっても, サブユニット構造は認められなかった.したがって, ST-オボアルブミンは単一鎖の巨大分子であると推定した.3)ST-オボアルブミンは酸凝固を起さず, また, 加熱する際は, 1%水溶液では煮沸してもまったく凝固しなかった.しかし, 2%水溶液では75℃で凝固し, その温度はニワトリ卵白アルブミンの凝固点より11℃も高かった.海亀卵白の蛋白質濃度は0.86%であり, この濃度の希薄なことが, 海亀卵白が煮沸しても凝固しない原因の1つであると考えた.4)ST-オボアルブミンの0.1%水溶液について, 加熱変性を差スペクトル法によって調べた結果, 55℃付近から構造変化が起るが65℃付近まで表面的には明らかな変性が認められなかった.一方, 変性によりST-オボアルブミンはCM-セルロースに吸着するようになることを認めた.以上の事実から, 変性時の構造変化には少なくとも二段階あることを確かめた.5)ST-オボアルブミンのアミノ酸組成に関しては, ニワトリ卵白アルブミンに比し, トリプトファン, ヒスチジン, グルタミン酸, アラニン, メチオニンおよびイソロイシンは非常に少なく, スレオニン, シスチン/2,ロイシンおよびチロシンが多かった.また, N末端アミノ酸は認められなかった.ST-オボアルブミンの全窒素含量は14.1〜14.4%で, ニワトリ卵白アルブミンより低く, この値はアミノ酸およびアミノ糖含量から求めた窒素含量とほぼ一致した.6)中性糖は6.7〜6.8%含まれ, その組成はガラクトース, マンノースおよびフコースであり, モル比は2 : 3 : 1であった.また, アミノ糖はグルコサミン, おそらくN-アセチルグルコサミンで, 含量は3.1〜3.3%であった.ST-オボアルブミン中にはアセチルとして揮発性酸が1.2%含まれていた.その大部分はアミノ糖に由来するものであった.
- 鹿児島大学の論文
- 1974-03-20
著者
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福永 隆生
畜産化学研究室
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古賀 克也
畜産化学研究室
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古賀 克也
Laboratory of Animal Biochemistry
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福永 隆生
Laboratory of Animal Biochemistry
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