非周期的視標時系列に対するヒトの予測性能(一般,ベイズ情報処理及び一般)

概要

論文の詳細を見る
ヒトを含め生物にとって環境変化の予測は生存のために極めて重要な能力である.例えば,生物の知覚-運動系には遅延が存在するため,その遅延を補償する予測機構がなければ,運動する獲物を捕食する事は困難である.また,逃亡する獲物の運動は,獲物の瞬時的な認知活動や,周囲のランダムな状況の結果として,非周期的になることもあると考えらる.このような場合でも,もし獲物の逃亡に一定のルールが隠されているならば,それを見抜いて予測することができれば捕食に有利である.本研究ではこの例に関係して,間欠的に提示される非周期的な時系列視標位置に対するヒトの予測能力をサッカードを用いて調査した.視標時系列は,仮現運動と知覚されないよう,また,できるだけ無意識的に予測されるように時間間隔を設定し,モニタに提示した.視標時系列には,1次もしくは2次のAR過程を採用した.これにより,視標時系列は非周期的となり,単なる周期的なパターンの記憶では予測不可能とした.さらに,AR過程と等しい静的統計量を持つ乱数時系列を用いた対照実験も行った.これらの実験結果から,ヒトはAR過程を準最適に予測していることが示唆された.
2006-10-04