オモダカの初期生長におけるエチレンと二酸化炭素の役割
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概要
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水田多年生雑草のオモダカ(Sagittaria trifolia L.)の初期成育を支配する要因を研究し,エチレンと二酸化炭素が暗黒中において,その成長を促進することを見出した。オモダカは,直径5~15mm程度の地中に形成した塊茎より発生し,最初に細長い沈水葉(submerged leaf)を、続いてそれより葉幅の広いへら葉(spoon-shaped leaf)を,そして最終的に気中に突出した長い葉柄の先端に,いわゆる矢尻状葉(arrowhead-leaf)をつける。この最初に出てくる沈水葉の長さは,塊茎を浸水する水深が深いほど長くなり(第1図),また葉の幅も広くなった(第2図)。塊茎をサイズの異なるフラスコに密閉すると,容器のサイズが小さい程幼植物の生長は促進された(第3図,第4図)。このことは,植物が生成するガス成分が生長に関与することを示唆し,それの候補としてエチレンと二酸化炭素が考えられたので,濃度の異なるエチレンの効果を試したところ,エチレンは暗黒中における初期生長を,促進することが見出された(第5図,第6図)。最も生長を促進するエチレン濃度は,10μLL^<-1>であった。植物から発生するエチレンと二酸化炭素が,実際に初期生長に役割を演じているかどうかを確かめるため,エチレンまたは二酸化炭素,あるいはその両方を除去した気中で試験すると,暗中での初期生長はこの両方のガスを除去した気中で,もっとも小さくなった(第1表,第6図)。このことから,オモダカの暗中での初期伸長に,植物自身から発生するエチレンと二酸化炭素は,重要な役割を演じていると結論された。
- 1995-02-10
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