イネとタイヌビエの混植条件下における生長解析
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概要
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水田で強害草とされるタイヌビエの競争力に関わる形質を明らかにする目的で, 前報^<15)>に引き続き, イネとタイヌビエを置換実験法(1:1, 20cm 株間)で混植して生長解析を行った。混植区のイネの草高は単植のイネと比べ, ほぼ同一のパターンで伸長したが, 分けつ数と地上部乾物重は明らかに小さい値で推移した(Fig. 1)。一方, タイヌビエの草高は単植区で大きく, 分けつ数と地上部乾物重は混植区で大きい値で推移した。収穫時において, 混植区におけるイネの個体当たりの地上部乾物重と籾収量はそれぞれ単植区の55, 49%であった(Table 3)。イネとタイヌビエのCGR(収量生長速度) は単植区と混植区に拘わらずLAI(葉面積指数)と同調して変化した(Fig. 2-A, C)。しかし, タイヌビエのCGRとLAIの値そのものはイネのそねらよりはるかに大きい値で推移した。混植区における移植60日後のCGRとLAIはタイヌピエが29g/m^2/day ,3.0, イネが9g/m^2/day, 1.9であった(Fig. 2)。生育後期(移植後39-88日)の混植区におけるイネとタイヌビエのCGRの変化はともにCGRと正の相関をもつNAR(純同化率)の変化によって83%説明できた(Fig. 2-A, B, Table 1)。しかし, CGRの変化とLAIの変化との間には, タイヌビエにおいて正, イネにおいて負の相関をもつ傾向があった。この原因は, タイヌビエでは上位葉群による葉面積の拡大が乾物生産に大きく寄与するが, イネではその葉群がタイヌビエの上位葉群によって遮光されるために乾物生産に寄与しないことにあると考えられる(Fig. 2-A, C)。単植区におけるタイヌビエの移植74日後の草高は152cmであり, 草高の小さいイネと混植された区におけるそれより有意に大きく, この雑草の草高が可塑性をもつことが示唆された(Fig. 1)。一方, イネの草高は単植区と混植区の間で全く違いがなく(Fig. 1), また, イネの穂に対する乾物分配率はタイヌビエのそれより 2から3倍大きかった(Table 2)。さらに, 同一系統のタイヌビエを他の品種のイネあるいはヒメタイヌビエと混植したとき, タイヌビエの草高は116ら158cmにわたり, 混植されたイネあるいはヒメタイヌビエの草高ぶり少し大きくなった(Table 4)。これらの実験結果から, 水田で強害草とされるタイヌビエの競争力に関わる形質の一つは, 上位葉群をイネの葉群より上層に分布させることは寄与する草高の可塑性であると考えられた。
- 1998-02-06
著者
-
草薙 得一
京都大・農
-
山末 祐二
京都大学農学部
-
草薙 得一
京都大学農学部
-
草薙 得一
京都大学農学都農学研究科雑草学講座
-
山末 祐二
京都大学大学院農学研究科
-
井上 博茂
京都大学農学研究科農学専攻栽培システム分野
-
井上 博茂
京都大学農学部付属農場
-
松井 勤
京都大学農学研究科
-
村山 英之
京都大学農学都農学研究科雑草学講座
-
山末 祐二
京都大学農学研究科
-
松井 勤
京都大
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