コナギの発生密度が湛水直播水稲の分げつおよび収量に及ぼす影響
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概要
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湛水直播水稲に対するコナギの雑草害に量的に表わし, かつその発現のメカニズムを明らかにする目的で, イネとコナギの発生密度をかえて, 1993年から3年間京都大学附属農場(高槻市)において実験を行った。イネの発生密度は1993, 1994年には, それぞれ220および580株/m^2とし, コナギは自然発生の群落を間引いて0, 50, 100および200個体/m^2に調節した。1995年の実験では, イネは180と400株/m^2, コナギは完全に取り除いた除草区と自然発生密度の2400個体/m^2区を設けた。生育期間に3回の刈り取り調査を行い, 草高, 乾物重, イネの分げつ数を, また, 成熟期にイネの収量を計測した。コナギの草高は成熟期にイネの草高の52%を超えなかった(Table 1)。1994年および1995年の実験では, イネの成熟期にイネの乾物量, 分げつおよび収量に対してコナギの影響が見られなかった(Tables 2, 3)。しかし異例の冷害となった1993年には, イネの生育が劣りコナギの雑草害が大きかった。3年間の実験の結果, コナギの乾物量(g/m^2)がイネの穂数(除草区に対する%)に対して大きな影響を与えることを認めた(y=100-0.123x; R^2=0.94, Fig.1)。さらに, イネの収量(籾の乾物量, kg/ha)は, 主にイネの穂数(m^<-2>)によって決定された(y=9755 (1-exp (-0.0017x)); R^2=0.94; Fig.2)。これまで報告された湛水直播水稲に顕著な雑草害を及ぼす草種(ノビエ, Ammania spp.)と異なり, コナギはイネの1穂当たりの収量に有意な影響がなく, 穂数にのみ影響を与えた。湛水直播水稲とコナギの競争における減収はイネの分げつ成長と雑草バイオマスによって決定され, 雑草害を軽減するためにはイネの播種密度と分げつ成長に注目すべきであることが示唆された。
- 日本雑草学会の論文
- 1999-10-29
著者
-
草薙 得一
京都大学農学部
-
ブリーン ジョンl.
ダウ・ケミカル日本株式会社ダウ・アグロサイエンス事業部門小郡開発センター
-
L. ブリーン
ダウ・ケミカル日本株式会社ダウ・アグロサイエンス事業部門小郡開発センター
-
ヒル ジェームズE.
Department of Agonomy and Range Science, University of California
-
ヒル ジェームズe.
Department Of Agonomy And Range Science University Of California
-
E. ヒル
Department Of Agronomy And Range Science University Of California
-
草薙 得一
京都大学農学部農学研究科雑草学講座
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