ミズアオイとコナギの種子の休眠, 発芽, 出芽特性の差異
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概要
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ミズアオイとコナギの種子の休眠, 発芽, 出芽に及ぼす環境要因の影響を検討し, 次のことが明らかになった。1) ミズアオイとコナギの種子の休眠はともに採種後戸外水槽中に貯蔵した種子が最も早く覚醒し, 採種後60日前後で高い発芽率を示した。また, ミズアオイでは戸外畑土表層, 戸外畑土中および5℃畑土中に貯蔵したものも高い発芽率を示し, コナギよりも低温条件による休眠覚醒効果が大きかった。2) ミズアオイの休眠覚醒種子は15℃から40℃までの温度条件下で発芽が認められたが, コナギは15℃では全く発芽しなかった。ミズアオイは20℃, 25℃, 30℃の温度で100%の発芽率を示し, コナギは30℃と35℃で100%となった。ミズアオイはコナギよりも低温条件下で発芽が可能であり, その発芽適温の幅はコナギよりも広いことが認められた。3) 播種から出芽始めまでの日数を調査した結果, ミズアオイとコナギはともに3月16日から7月19日までの間に播種した場合には播種時期が遅くなるにともない, 出芽始めまでの日数が短かったが, 8月14日の播種からは播種時期が遅くなるにともない, 出芽始めまでの日数が増加し, 播種から出芽始めまでに要する日数は積算温度に強く規制されていた。4) 両草種ともに暗条件下での発芽率は明条件よりも低く, その差異は温度が低いほど大きかった。5) 水深と発芽との関係についてはミズアオイとコナギはともに湛水深が5cmと3cmの場合に発芽率が高く, 水深0cmより水位が低くなるにともない, 発芽率も低くなった。とくにコナギは水深0cm以下の水深ではほとんど発芽せず, 地表面から-5cmの水位では発芽率は0%であった。6) 出芽に及ぼす覆土深の影響についてはミズアオイとコナギはともに覆土が厚くなるにつれて, 出芽率が低下したが, 覆土深が1.5cmまではコナギの方が出芽率が高かった。出芽の限界覆土深はミズアオイでは3.0cm, コナギでは2.0cmであったが, この限界覆土深では両草種ともに出芽率は数パーセント程度であった。7) 種子が発芽能力を有するまでの開花後日数はミズアオイの種子では少なくとも23日間を要し, 27日以上経過すれば, 75%以上, 33日以上経過したものは100%の発芽能力があった。コナギはミズアオイよりも少し遅く, 発芽能力を有し始めたのは開花後27日であった。その後, 急速に発芽率の向上が認められた。
- 1996-10-25
著者
-
伊藤 一幸
独立行政法人国際農林水産業研究センター
-
草薙 得一
農林水産省農事試験場
-
汪 光煕
京都大学農学部雑草学研究室
-
伊藤 一幸
水産省東北農業試験場
-
汪 光煕
京都大学農学研究料
-
伊藤 一幸
農林水産省農業環境技術研究所
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