ミズアオイとコナギにおけるアイソザイムの変異
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概要
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ミズアオイとコナギの種間や種内変異の様相を明らかにする一環として, 日本全国36道府県から集めたミズアオイ10集団とコナギ50集団のアイソザイムの変異について検討した。1) ミズアオイにおける6種のアイソザイム遺伝子のうち, Pgi-3の1座では多型がみられなかった。一方, Pgd-1, Pgd-2, Pgi-1 およびPgi-2 の4座では2種の対立遺伝子, Sdh-1の1座では3種の対立遺伝子がみられた。これに対して, コナギにおいては, Pgd-1とPgi-1の2座では多型がみられなかったが, Pgd-2, Pgi-2, Pgi-3およびSdh-1の4座では2種の対立遺伝子がみられた。2) ミズアオイ集団は大きな遺伝的多様度(genetic diversity)をもっていた。その全集団の遣伝子多様度(H_T)の平均値は0.333で, Loveless andHamrick^<8)>の報告した76種の他殖性植物のH_Tの平均値(0.251)よりも大きかった。また, 集団内の平均遺伝子多様度(Hs)の平均値は0.227であり, Loveless and Hamrick^<8)>が報告した他殖種のH_sの平均値よりも大きいことがわかった。さらに, ミズアオイの集団間の平均遣伝子同一度(D_<ST>)は0.106で, 集団間の相対的遺伝子分化の程度(G_<ST>)は0.386である。D_<ST>がH_sより小さいことはミズアオイの集団内の遺伝的変異が集団間よりも大きいことを示したのに対して, G_<ST>が0.386であることから, ミズアオイにおける遺伝変異の約61%は集団内個体間に存在していることがわかった。3) コナギはミズアオイよりも遺伝的変異が少なかった。4) 生育環境や繁殖様式といった要因は両草種の遺伝的変異に大きな影響を与えている。生育環境の不均一および昆虫による異花受粉はミズアオイがコナギよりも高い遺伝的変異を維持する上で重要な役割を演じていると推察される。
- 日本雑草学会の論文
- 1996-10-25
著者
-
伊藤 一幸
独立行政法人国際農林水産業研究センター
-
草薙 得一
農林水産省農事試験場
-
汪 光煕
京都大学農学部雑草学研究室
-
伊藤 一幸
水産省東北農業試験場
-
汪 光煕
京都大学農学研究料
-
伊藤 一幸
農林水産省農業環境技術研究所
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