雑草制御を目的としたシロクローバ植被の育成における播種法と刈取の影響
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概要
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樹園池など粗放的な植生管理が求められる場面では, 植被を利用した害草制御は検討に値する方法であり, シロクローバ(trifolium repens L.)はその有望な材料と考えられる。本研究ではその播種法と初期の刈取が, クローバの定着ならびに植被の雑草制御効果に及ぼす影響を調査した。シロクローバ2品種(コモン型:グラスランドフィア, ラジノ型:カリフォルニアラジノ)を用い, 2段階の播種量0.5kg/10a, 2.0Kg/10a)および2時期の播種時期(1991年9月18日, 同10月14日)について比較した。実験は大阪府高槻市の休耕地で2年間実施し, 実験期間を通じて植生調査および4, 6, 8, 10月の刈取処理を行った。実験圃場の植生は, Th, D_4, R_5型が優占し, 熟畑的な型であった(Table 1)。いずれの処理区でもクローバは良好に発芽, 定着し, その被度は播種翌春には80%を越えた(Fig.1)。1993年以降はラジノの被度がコモンよりも高くなった(Fig. 1)。植被のすみやかな確立には早期播種(9月)が有効であり, 密播も効果があった (Fig. 2)。晩期, 粗播(10月, 0.5Kg/10a)ではクローバによる地表面の被覆が最も遅れた(Fig. 2)。このような播種法による差は6月にはほぼ消失した。草高はラジノの方がコモンより高く推移した(Fig. 3)。晩期, 粗播区において顕著であった被覆の遅れは一年生冬雑草, 特にナズナ(Capsella bursa-pastoris (L.) Medik.)や, 風散布型のキク科雑草, 特にオオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)の侵入, 発生を許した(Fig.4およびTable 2)。一年生冬雑草はクローバの優占度にほとんど影響を及ぼさなかった。しかし, オオアレチノギクは無刈取の場合, 夏期に草高が約2mに達し, 群落下層のクローバを庇陰し, 見苦しい景観を形成した(Fig.5)。オオアレチノギクは4月の刈取後は再生したが, 6月の刈取によって枯死した(Fig.5)。すなわち, 播種後1年目にクローバの優占群落を形成するためには, 6月の刈取1回で十分効果的であることが明らかとなった。早期のクローバ植被によってもギシギシ属(Rumex spp.)やネズミムギ(Lolium multiflorum Lam.)の発生, 生育は抑制されなかった(Fig. 4)。本調査で得られた結果は樹園地以外の非農耕地においても利用可能なものと考える。
- 日本雑草学会の論文
- 1995-05-31
著者
-
浅井 元朗
中央農業総合研究センター
-
伊藤 操子
京都大学農学部
-
浅井 元朗
京都大学農学部雑草学研究室
-
草薙 得一
京都大学農学部雑草学研究室
-
草薙 得一
京都大・農
-
草薙 得一
京都大学農学部
-
草薙 得一
京都大学農学都農学研究科雑草学講座
-
伊藤 操子
京都大学大学院農学研究科雑草学研究室
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