コハコべとミドリハコベの個体群において発生時期の差異が生存率と個体サイズに及ぼす影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
京都付近ではコハコべは畑地や果樹園の主要雑草であるが, これに近緑なミドリハコベは農耕地には侵入しない人里植物である。両種の代表的な生育地において実生の発生, 死亡および開花の過程を調査し, 以下の結果を得た。1) 畑地および果樹園においてコハコべの実生は春期から秋期まで断続的に発生し, とくに耕転の後に集中して発生する傾向にあった(Fig. 1)。発生した個体は1〜2ヵ月後に開花を開始した(Fig. 2)。2) 沢沿い, 樹園地および路傍においてミドリハコベの実生はほぼ秋期に限って発生した(Fig. 1)。発生した個体は栄養成長を続けながら越冬し, 翌春開花結実後, 枯死した(Fig. 2)。3) コハコべでは耕起後早く発生した同齢集団(cohort)ほど開花までの生存率が高く(Fig. 3), 個体サイズも大きい傾向があった(Fig. 4)。耕起後遅く発生した同齢集団のおもな死亡要因は次回の耕起や除草であったが, 競争によると推定される場合もあった。4) ミドリハコベでは秋期早く発生した同齢集団ほど翌春における生存率は低いが(Fig. 3), 個体サイズは逆に大きい傾向にあった(Fig. 4)。以上の観察結果から, 両種は生育地の環境の違いに対応した対照的な発芽戦略を示していると解釈される。コハコべでは耕転などの人為的撹乱が直接の死亡要因となり, またその直後は実生の生育に好適な環境がつくられるために耕転直後の発生が有利になっていると考えられる。またミドリハコベでは早すぎる発芽は生存率を, 遅すぎる発芽は個体サイズを低下させるため秋期の最適な発芽時期が決まっている可能性がある。
- 日本雑草学会の論文
- 1995-10-31
著者
-
三浦 励一
京都大学農学研究科
-
草薙 得一
京都大学農学部雑草学研究室
-
小林 央往
山口大学農学部
-
小林 央往
山口大学農学部生物生産科学講座
-
草薙 得一
京都大学農学部
-
三浦 励一
京都大学農学部雑草学研究室
-
三浦 励一
レッドデータブック近畿研究会
関連論文
- 除草の風土〔2〕: インド・デカン高原の冬作ソルガム
- 雑草の生活史戦略の多様性をどうみるか : 一年生雑草を例に
- 許容限界(要防除水準)はどこへ行く? : ETからEOTへ
- 除草の風土〔7〕 西アフリカ・サバナ帯の鍬除草
- 除草の風土〔6〕米国南部の草地における牛と草と潅木
- 雑草の個体群生態学研究会
- 新企画「雑草モノグラフ」の掲載にあたって
- 京都大学周辺におけるイヌノフグリの分布とアリによる種子散布
- "Weed Science" 第49巻4, 5および6号の内容紹介
- Weed Science第49巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Science"第48巻4〜6号の内容紹介
- 雑草制御を目的としたシロクローバ植被の維持管理に及ぼす刈取体系の影響
- 雑草制御を目的としたシロクローバ植被の育成における播種法と刈取の影響
- 第4回国際雑草科学会議(4^International Weed Science Congress)の概要
- "Weed Science"第48巻1〜3号の内容紹介
- ゴルフ場におけるスズメノカタビラ(Poa anuua L.)の個体群動態
- 農耕地におけるスズメノカタビラの形態および繁殖体投資率と繁殖体生産における変異
- 59 コハコベおよびミドリハコベの発芽特性と野外における出芽様相
- 75 スズメノカタビラの変異について : ゴルフ場における各種プレー区集団の諸特性
- 畑雑草コハコべと人里植物ミドリハコベの種子休眠性および発芽特性の比較
- コハコべとミドリハコベの個体群において発生時期の差異が生存率と個体サイズに及ぼす影響
- "Weed Science" 第47巻4〜6号の内容紹介
- 16-17 西アフリカ・サヘル帯の休閑地植物に関する生理生態学的研究、とくにそれらの窒素給源なびに種間の競合について(16.畑地土壌肥よく度,2009年度京都大会)
- 近畿地方新産植物補遺1
- チガヤ(Imperata cylindrica (L.) BEAUV. var. koenigii (RETZ.) DURAND et SCHINZ)の耐塩性におけるクローン間変異
- 日本産チガヤの地方集団への適応的分化
- 日本産チガヤの温度および日長に対する出穂反応における変異
- 紀伊大島におけるチガヤの集団間および集団内変異
- 紀伊半島におけるチガヤ(Imperata cylindrica (L.) BEAUV. var. koenigii (RETZ.) DURAND et SCHINZ)の内陸集団および海岸前線砂丘集団の差異
- チガヤ(Imperata cylindrica (L.) BEAUV.)の日本列島における地理的変異
- ヒエ属雑草種子のアルコール脱水素酵素ザイモグラムおよびその遺伝と嫌気発芽性
- スギナ胞子の発芽および前葉体の形成条件
- スギナの乾物生産特性および地下部繁殖器官の温度反応性
- ハルタデ種子の発芽性に及ぼす生育時の日長および温度条件の影響
- 主要畑夏雑草の生育および種子生産に及ぼす播種期の影響
- 主要畑夏雑草の生育特性, 特に出穂・着蕾に及ぼす日長および温度条件の影響
- 浮選法による土壌中雑草種子分離回収装置の試作
- メヒシバ,ヒメイヌビエ,シロザの出芽後出穂・着蕾までの日数に対する日長と気温の効果
- "Weed Research"第47巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Science"第46巻4, 5および6号の内容紹介
- "Weed Science"第46巻1, 2および3号の内容紹介
- "Weed Science"第45巻4, 5および6号の内容紹介
- "Weed Science"第45巻1, 2および3号の内容紹介
- "Weed Science"第44巻3および4号の内容紹介
- "Weed science"第44巻1および2号の内容紹介
- 水田におけるアメリカアゼナ (Lindernia dubia) の閉鎖花の比率
- 京都市の公共用芝地における雑草の分布と土壌要因の関係
- 京都市の公共用芝地における土壌理化学性の現状
- 34 アメリカアゼナの開放花と閉鎖花の生産について
- 種子散布のための棘を失ったタウコギの変異型
- クロロプロファムによるワルナスビ根片繁殖系の制御
- 9 ワルナスビの地下器官系の分布拡大様式
- 多年生雑草ワルナスビの根系の構造と資源分配
- 水田と池のクログワイの変異と適応様式
- ヒルガオおよびコヒルガオのクローン識別のためのマルチローカスDNAフィンガープリンティングの適用
- 124 ヒルガオおよびコヒルガオのクローン識別のためのマルチローカスDNAフィンガープリンティングの適用
- 帰化植物イヌコハコベはStellaria pallidaである。
- ミズアオイの花の鏡像二型性と送粉様式に関する研究
- 100 ハコベ属雑草の変異と適応 : 3. 発芽特性における変異
- 50 ハコベ属雑草の変異と適応 : 2. 開花習性にみられる種間および種内集団間差異
- 52 ハコベ属雑草の変異と適応 : 1. 京都市における生態分布と変異
- 17 チガヤの耐塩性におけるクローン間変異
- 135 ブンドウ(リョクトウ)類の形態学的分類基準について
- 紀伊大島におけるチガヤ草地の現存量の季節変化
- "Weed Science" 第34巻4〜6号の内容紹介
- "Weed Science" 第34巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Science"第33巻4〜6号の内容紹介
- "Weed Science"第33巻1〜3号の内容紹介
- 82. チガヤの日本における変異について
- "Weed Science" 第32巻 4〜6号の内容紹介
- "Weed Science" 第32巻 1〜3号の内容紹介
- 47 チガヤの海岸前線砂丘と内陸集団の差異について
- "Weed Science"第31巻4〜6号の内容紹介
- "Weed Science"第31巻1〜3号の内容紹介
- 46. クログワイ塊茎の萌芽性におけるクローン間変異について
- 42. クログワイ類の塊茎における変異について : 形状と諸特性との関係
- 49 種子散布のための棘を失ったタウコギの変移型
- 他殖性穀類トウジンビエにみられる作物-雑草平衡多型 (日本の遺伝学の潮流--日本遺伝学会第78回大会ハイライト) -- (ワークショップ 栽培植物の遺伝学--雑種形成,倍数性進化,多様性)
- P11 トウジンビエ作物-雑草複合における雑草型形質の遺伝様式
- 63 雑草型トウジンビエの自殖後代における表現型の分離と相関
- 雑草型トウジンビエの自殖後代における表現型の分離と相関
- 97 インドと西アフリカにおけるトウジンビエ畑の雑草植生
- インドと西アフリカにおけるトウジンビエ畑の雑草植生
- P9 トウジンビエ畑の脱粒性トウジンビエ : 西アフリカ・マリの事例
- トウジンビエ畑の脱粒性トウジンビエ : 西アフリカ・マリの事例
- 127 ニジュール川の有用植物,ブルグ(Echinochloa stagnina)
- ニジェール川の有用植物、ブルグ(Echinochloa stagnina)
- インドの伝統的雑穀畑における雑草の利用例
- 129 インドの伝統的雑穀畑における雑草の利用例
- 81 西アフリカのサバナ帯に産するイネ科雑草6種の種子発芽特性
- 西アフリカのサバナ帯に産するイネ科雑草6種の種子発芽特性
- 68 ヒルガオおよびコヒルガオの生態的特性からみた生育地の違いについて
- 44 被度と草高に基づく雑草バイオマス推定の可能性について
- ヒルガオおよびコヒルガオの生態的特性からみた生育地の違いについて
- 被度と草高に基づく雑草バイオマス推定の可能性について
- 敦賀市中池見の湿田農耕と絶滅危惧植物〔含 コメント〕
- AFLP解析による近畿地方におけるチガヤの変異
- AFLP 解析による近畿地方におけるチガヤの変異
- 16-11 ザンビア東部州の疎開林において農耕地への転換が土壌養分に与える影響(16.畑地土壌肥よく度,2010年度北海道大会)
- 16-15 半乾燥熱帯アフリカにおける耕作/休閑サイクルが土壌有機物に与える影響 : ザンビア東部州の事例(16.畑地土壌肥よく度,2012年度鳥取大会)