内蒙古における植生の空間的不均一性
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概要
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中国内蒙古植生の空間的不均一性と生態学的特性を把握するために,東部から西部にかけて針葉樹-広葉落葉樹林,潅木林,草原,砂漠からなる植生の調査・解析を行った。1.180.000km^2の面積をもつ内蒙古の地図上に1,122個の30km×30kmメッシュ(L-コドラート)を描き,さらに各L-コドラートを15km×15km(S-コドラート)の4区画に区切って,それぞれの植生のS-コドラート内への出現頻度を記録した。調査においては,各植生の出現頻度と空間的不均一性を記述・解析するためベータ-ニ項分布を用いた。景観全体を構成している植生の不均一性の出現頻度で重み付けをした平均を,「景観レベルの不均一性の尺度」(植生の空間的な複雑さを表す)として用いた。植生は99類型に分類できた。植生の空間的不均一性(p)の最大値は,Larix林(V_1)(降水量の多い東北地方で蒙古)の0.8588であった。最小値はSahora alopecuroides-Glyeyrrhiza uralensis(V_<90>)およびCaragana leucophloea(V_<77>)(出現頻度が0に近く,低い不均一性)であり,保護を要するパッチで,V_<90>は東部の2つのパッチを,V_<77>は西部にただ1つの島状を形成していた。最も頻度の高かった植生,灌漑のない耕地(V_<98>)の割合p_<98>は0.1938で,内蒙古全土の4.77%を占めていた(湖沼などの占める割合p=0.2540を除く)。自然植生で高い頻度が見られたのは, Stipa grandis(V_<25>)草原とAchnatherum splendis(V_<89>)塩生草地である。これらはともに,内蒙古の中・南部に分布していて,内蒙古植生の表徴種である。草原植生で最も高い不均一性を示したのは,Artemisia ordosica(V_<49>)砂丘地で,内蒙古南部全体に分布している。不均一性の重み付平均値(p_1)は0.6017,植生の多様性指数値(H_1')は4.4766であった。このような高い不均一性の重み付平均値と多様性指数値から見ると,内蒙古のマクロ植生は草地と砂漠で特徴づけられると考える。
- 日本草地学会の論文
- 2004-10-15
著者
-
王 〓生
東北農業大学動物科学技術学院
-
山村 靖夫
茨城大学理学部
-
塩見 正衞
茨城大学理学部生態学研究室
-
塩見 正衛
茨城大学理学部
-
堀 良通
茨城大学理学部生態学研究室
-
陳 俊
茨城大学大学院理工学研究科
-
黄 大明
清華大学生物科学与技術系
-
塩見 正衛
茨城大学大学院理工学研究科
-
高橋 繁男
東北農業研究センター
-
堀 良通
茨城大学大学院理工学研究科
-
山村 靖夫
茨城大学大学院理工学研究科
-
王 生
東北農業大学動物科学技術学院
-
陳 俊
茨城大学:北海道農業研究センター:(現)西北農林科技大学動物科技学院草業科学系
-
高橋 繁男
東北農研セ
-
高橋 繁男
東北農業研究センター:(現)日本草地畜産種子協会九州試験地
-
堀 良通
茨城大学理学部
-
堀 良通
茨城大学理学部地球生命環境科学科生態学研究室
-
山村 靖夫
茨城大学理学部生態学研究室
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