小笠原におけるギンネム林の更新(<特集>亜熱帯域島嶼の生態系管理(I):未来環境創造型基礎研究プロジェクトから)

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ギンネムは明治時代に小笠原に移入され,放棄された耕地や宅地,および植生や土壌の攪乱のあったその他の場所に広がって,優占林を形成している.ギンネム林の更新過程を明らかにするために,父島の5ヵ所の林分に合計8個の永久方形区を設置して約20年間にわたって毎木の追跡調査を行った.1つの調査区では調査開始直後にギンネムの一斉枯死がおこった.他の区でも調査期間の後半になって,一斉枯死ないしはその兆候がみられた.調査した林分の多くは調査開始時点で林齢30数年前後の一斉林であり,ギンネムの一斉枯死は同齢林における寿命による現象と考えられる.1985年に侵入したギンネムキジラミの食害はギンネムの一斉枯死の要因として重要であると思われる.また,野生化したヤギによる食害は,一斉枯死後の更新の妨げになるとみられる.ギンネム林の一斉枯死後に元のような純林が再生しつつあるのは1つの場所だけであり,他ではアカギなどの他の外来樹種が侵入したり,草本の密生する疎林へと変化した.在来樹種への更新はどの区においても全く観察されなかった.ギンネム一斉枯死後の植生変化は,立地条件の違いや他の植物との関係により異なると思われる.小笠原のギンネム林は,一部は維持されるものの,全体としては衰退しつつあることが明らかである.
日本生態学会の論文
1999-12-10

小笠原におけるギンネム林の更新(<特集>亜熱帯域島嶼の生態系管理(I):未来環境創造型基礎研究プロジェクトから)

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