長期放牧実験の解析.1.牧草バイオマスと草種組成の季節的, 年次的変化.
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概要
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本研究の目的は草地生態系におけるバイオマスと草種組成の時間的変化を把握し, これらの変化と環境要因, 例えば, 気象条件や放牧などの人為撹乱との関係を明らかにすることである。そのための放牧試験が北関東に位置する草地試験場の人工草地で, 1974年から21年間行われた。4週一巡の輪換放牧を毎月(4月から11月まで)継続し, 放牧前後の地上部と地下部のバイオマスを測定し, そのデータを解析した。1974年から1981年の8年間は, 放牧強度が異なるふたつの放牧区を設け, 調査を行った。地上部バイオマスは季節的変動が大きく, 重放牧区で180〜260gDWm^<-2>軽放牧区では200〜360gDWm^<-2>であった。1982年から1989年の8年間は, 上記と同じ草地で放牧強度を同じにして施肥量を2段階に変えて, 4週一巡の放牧試験を行った。地上部バイオマスは少肥区では150〜380gDWm^<-2>多肥区では240〜360gDWm^<-2>であった。1990年から1994年の5年間は, 少肥・重放牧の条件下で, 4週一巡の輪換放牧を継続した。地上バイオマスは240〜340gDWm^<-2>であった。いずれの試験においても, それぞれの処理区において, 最も高いバイオマス値は5月から6月に現れ, 最も低い値は11月に記録された。地上部枯死部の季節的・年次的変動は大きく, 地上部バイオマスと正の相関が見られた。地下部バイオマスは放牧年次の進行に従って年々減少する傾向が見られた。出現種の構成割合の季節的・年次的変動は大きく, 牧草に対する侵入自生野草のバイオマスの比は放牧年次の進行に従って徐々に増えた。時たま現れる冬の厳しい低温, 夏の強い乾燥と高温などの気象条件, 放牧や施肥などの人為撹乱の強さや量, または自生野草と牧草間の種間競争などが野草の侵入・定着の原因と考えられる。
- 日本草地学会の論文
- 2001-10-15
著者
-
築城 幹典
岩手大学農学部
-
塩見 正衛
茨城大学理学部
-
高橋 繁男
東北農業研究センター
-
亦 如瀚
曁南大学環境科学系
-
大久保 忠旦
那須大学
-
秋山 侃
岐阜大学流域科学研究センター
-
小山 信明
近畿中国四国農業研究センター
-
亦 如瀚
茨城大学理工学研究科
-
築城 幹典
岩手大学
-
高橋 繁男
東北農研セ
-
大久保 忠旦
那須大学都市経済学部
-
高橋 繁男
畜産草地研究所
-
高橋 繁男
東北農業研究センター:(現)日本草地畜産種子協会九州試験地
-
小山 信明
(現)畜産草地研究所
-
秋山 侃
岐阜大学流域圏科学研究センター
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