イエバエの卵巣発育に関する研究 : II. 化学不妊剤 hempa の卵巣発育に対する影響

概要

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イエバエの卵巣の発育機構に関する研究と関連して, イエバエの卵巣発育に対する昆虫不妊剤hempaの影響を検討した。hempaを餌に混ぜ, 羽化後雌雄にともに継続して摂食させたところ, 0.02%以下の低濃度のhempaの処理により孵化率の顕著な低下がみられ, 0.1%以上の高濃度のhempaにより産卵数の著しい減少と孵化の完全な抑制が示された。また正常な卵巣の成熟期である羽化後4日目の卵巣の発育状態を検討した結果, 卵巣の生重量および卵胞の大きさは, hempaの処理濃度の増加に伴い急激に低下する傾向を示した。一方, hempa処理卵巣について組織学的に観察した結果, 低濃度のhempaにより成熟卵胞の卵質は著しく空胞化し, 高濃度のhempaにより栄養細胞および卵胞上皮細胞における核濃縮と核の崩壊・退化, ゲルマリウムの崩壊, 第2卵胞の発育抑制等の細胞学的変化が示された。またhempa処理雌の脂肪体についても細胞の著しい空胞化が観察された。以上の結果より, hempaはイエバエの雌性生殖細胞に対しても雄性生殖細胞におけると同様に強力に作用し, 正常な卵形成過程を攪乱することにより雌性不妊の効果を示すものと推察された。
日本衛生動物学会の論文
1974-06-15