問題解決学習としての音楽授業の特質と構造 : 創作の授業分析を通して
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概要
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従来音楽教科はよき演奏を実現するという授業観が支配的であったため,これまでの音楽授業研究は,教師の指導方法研究の立場に立つものが多く,子どもの創造的な問題解決思考の観点からはほとんどなされてこなかった。本稿の目的は,子どもの創造的な問題解決過程を軸とした音楽授業を分析することによって,音楽の授業において問題解決的思考がいかなる条件下でいかなる形態で起こるか,その諸要因及び諸要因間の関連を解明することである。創作活動での子どもの問題解決過程は,①素材に,子どもが今もっている力を使って働き掛ける中でイメージが形成される,②目指すべき作品のイメージと関係して,欲求の形をとって問題が発生する,③欲求実現のための探究的な操作が為される,④出来上がった作品に満足してそれで遊ぶか,あるいは思うように出来ず行き詰まる(前者の場合はさらに変化を求めてふたたび①の段階からくり返す),⑤自分の行った操作内容を自覚的に認識することが,問題解決への見通しを生む,⑥問題解決のための新たな課題が意識され,操作,操作の評価へ至る,というものであった。その中で⑤の場が成立するには,作品の基盤にある感じ方・考え方・行動の仕方の次元で,他人とのかかわりを認識できるような授業を仕組む必要があるのだが,それは共通問題を焦点化する過程ともいえる。The purpose of this study was to determine the factors in problem solving approach to the music teaching and learning and to clarify the relationships of these factors,through the analysis of music making activity in the elementary school.The analysis led the following.The image about a work-to-be is formed through tentative action toward the sound resource.Problems occur as desire form the image.To gratify the desire,inquiry operation begins.Then satisfaction produces a play(and the first step in this process begins again),or dissatisfaction produces a impasse.To get the perspective of solution,children need recognize the meaning of operation which they have done.For the recognition it is an effective way that the teacher organizes the discussion focused on the common problem.
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