TOGA-COARE集中観測データに基づく下部成層赤道慣性重力波の解析
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概要
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TOGA-COARE集中観測期間中の10地点の高層データの東西風・南北風・温度ラジオゾンデ観測データを用いて、熱帯成層圏下部における波動擾乱の解析を行なった。解析は3日以下の短周期成分に着目した。各地点の東西風・南北風・温度成分の時間高度断面図には、成層圏下部に時折、周期約2日、鉛直波長3〜5kmの波動状の擾乱が見られた。そこで、まず、パワースペクトル及びクロススペクトル解析を行なった。その結果、TOGA-COARE-LSA(Large-scale Soundings Array)北部[7°N-8°N]とLSA南部[9°S-11°S]には鉛直波長約3〜4km、東西波長数1000km〜10000kmの良く似た東進波が、同時に存在することがわかった。擾乱の東西風成分と南北風成分の一地点での位相差、北部領域と南部領域間の位相差は、擾乱が赤道域にトラップされた慣性重力波の特徴と一致する。一方、LSA赤道域には、鉛直波長約4-5kmの北部南部領域とは異なる特徴を持つ東進波が存在することがわかった。東西風成分には有意な東西地点間の位相差は検出できなかったが、南北風成分の位相差は、擾乱が3000〜4000kmの東西波長を持つことを明確に示していた。次に、対流活動との関係を調べるために、GMSのTBBデータを用いて対流活発時をキーにとったコンポジット解析を行なった。ラグ時間高度断面図には、スペクトル解析の結果と良く一致する特徴を持つ、鉛直波長3〜5kmの風・温度擾乱が下部成層圏に見られた。これは熱帯下部成層圏短周期波動擾乱が対流活動に関連して発生していることを示唆する。また、これらの波動擾乱は上部対流圏及び下部成層圏で位相が下向きに伝播していた。これは、波動のエネルギーが上向きに伝播していることを示している。さらに、赤道波の分散関係式を用いて、上記のスペクトル、コンポジット解析により明らかになった波動構造(周期、水平構造、鉛直波長)を持つモードの特定を試みた。まず、LSA北部と南部で検出された擾乱はn=1東進慣性重力波である可能性が高い。一方LSA赤道域で検出された擾乱は、東西風成分、南北風成分について異なるモードによる可能性がある。なぜなら、赤道において、偶数モードは南北風成分のみ、奇数モードは東西風成分のみ持つからである。南北風成分に顕著なLSA赤道域の擾乱の構造はn=0東進慣性重力波と良く一致している。一方、同領域の東西風に顕著な擾乱は、東西に離れた地点間での有意な位相差が捉えられなかったことから赤道ケルビン波、n=1の西進及び東進慣性重力波が混在したものと推察される。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1999-06-25
著者
-
佐藤 薫
京都大学大学院理学研究科地球物理学教室
-
和田 浩治
東京大学気候システム研究センター
-
和田 浩治
東京大学気候システム研究センター:(現)電力中央研究所大気科学部
-
新田 勅
東京大学気候システム研究センター
-
佐藤 薫
京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻
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