環境の異なる氷河地域における雪氷試料の電気伝導度とpH(英文)

概要

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ネパール・パタゴニア・北極・南極地域からの雪氷試料を用いて, 融解後の電気伝導度とpHの値を比較検討した。試料の電気伝導度とpHは地域によって変動の範囲・平均値が異なっている。降雪に含まれる溶存イオン量が小さく電気伝導度の低い場合には, 地域に関わりなくほぼ一定のpH値を示す。しかし, 電気伝導度が増加するとともにpHが変動し, そこには地域的特徴が現れる。すなわち南極の海岸付近(昭和基地)・ネパール・パタゴニア地域では, 電気伝導度値が増加するのに伴ってpH値も増加しているが, 南極の内陸部では逆にpH値は減少している。原因としては海の直接的影響, 土壌圏の中和作用, 大気圏上層部での物質の取り込み過程, 火山活動, 人為的影響などが挙げられる。すなわち, 降雪系での物質輸送過程が重要な役割を担っていると考えられる。北極域グリーンランド及びスピッツベルゲン島において採取したコアには, 過去の電気伝導度とpHの値が記録されている。グリーンランド試料での値は, 南極内陸部と同様な傾向を示す。一方, スピッツベルゲン島の試料では値の変動幅が大きく, さまざまな環境変動の影響を受けてきたことを推測させる。スピッツベルゲン島のコア試料を深さごとに一定間隔で整理することによって, 各期間ごとの電気伝導度とpHの変動特性を明らかにした。この変動特性は, コア中の気泡を含んでいない氷の分布と一致していた。このような氷は過去の温暖な時期に形成されるので, 変動特性と合わせて物質輸送過程の変動を推定した。
国立極地研究所の論文

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