カキ伝九郎と平核無果肉切片におけるアセトアルデヒド生成の品種間差異

概要

論文の詳細を見る
山形県庄内地方の在来品種である渋ガキの伝九郎はエタノールでは極めて脱渋しにくいが, 温湯浸漬や炭酸ガス処理を行うと平核無より容易に脱渋することをさきに. 報告した. 本報告では両品種の間にこのような脱渋の難易差が生じる原因を果肉切片のアセトアルデヒド (AA) 生成を比較することによってさらに明らかにしようとした.<BR>三角フラスコに緩衝液とともに果肉切片を入れ,AA生成の基質や酵素阻害剤あるいは代謝中間物質を加えてインキュベートし, ヘッドスペースに発生するAAの濃度を調査した. その結果, 平核無ではアルコールデヒドロゲナーゼの阻害剤をエタノールと同時に添加するとAA生成が抑制されたが, 伝九郎ではほとんど抑制されなかった. このことはL平核無では伝九郎に比べてエタノールがAAに代謝されやすいこと, また, 伝九郎では添加したエタノールがAAに代謝されるよりも, 一種のストレスとなって嫌気呼吸が誘導されやすいことを示すものと考えられた、また, ピルビン酸やリンゴ酸の添加効果は, 伝九郎の方がより高く, AA生成はL平核無よりよく促進された.<BR>これらの結果は, 平核無果肉切片ではエタノールが比較的AAに代謝されやすいのに対して, 伝九郎では嫌気呼吸が平核無より容易に誘導されて, ピルビン酸経由でAAを生成しやすい性質を持っていることを示していると考えられた. このような両品種の果肉の代謝特性のちがいはインタクトな果実でみられた脱渋の難易の差 (脱渋方法による脱渋しやすさの違い) をよく反映しているものと思われた.
園芸学会の論文

カキ伝九郎と平核無果肉切片におけるアセトアルデヒド生成の品種間差異

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク