尿中錫の水素化物加熱原子化による高感度定量法

概要

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近年,錫(Sn)は生体にとって,毒物であるだけでなく,必須微量元素であることが明らかにされてきた1)が,生体内機能は殆ど明らかにされていない。一方,生体内に存在するSnは微量であり,生体内機能や生体内のSnの含有量を明らかにするには生体試料に適用可能な高感度,かつ,簡便なSn定量法の開発が必要である。高濃度のSnの定量には,従来から,原子吸光法が用いられているが,近年,ガス状水素化物の生成によりSnを測定する方法も報告されてきており2〜12),食品類中Snの定量への適用例もある2,4,8,9)。これまでに,ヒトの組織13)や尿14,15)中Snの含有量の報告もあるが,これらの測定法は手順も煩雑で,多量の試料を要する。高感度が得られる水素化物の生成による生体試料中Sn定量の報告はこれまでにない。 今回,ガス状水素化物を生成し,原子吸光法を用いたヒトおよびラット尿Snの定量法について検討した。本方法は,ガス状水素化物生成のために,新しく,トリクロロ酢酸(TCA)を用いることにより,安定した高感度が得られ,ヒトおよびラットの尿中Snを灰化を行わず希釈するのみで簡単に定量することが出来たので報告する。
日本衛生学会の論文