妊娠による赤血球セレニウム濃度およびグルタチオンペルオキシダーゼ活性の変化

概要

論文の詳細を見る
セレニウム(Se)は,生体に必須の微量元素であり,その作用の多くのものは,含Se酵素であるGlutathione Peroxidase (GSHPx)の作用で説明できる。GSHPxは,生体内で過酸化物の還元を触媒する酵素である。Behne1,2)らは,ラットでは,妊娠により血漿Se濃度が低下し血漿GSHPx活性も著明に低下すると報告している。また,彼らは妊娠中の女性は,非妊娠中の女性と比べて,血漿Se濃度と血漿GSHPx活性が低下すると述べている3)。Peronaら4)は,ヒトの新生児では,赤血球(RBC) GSHPx活性が正常成人女性と比べて低く,血漿Se濃度も低いと報告している。他方,例えば克山病のようにセレニウム欠乏による心疾患5)等の多くの報告がある。著者ら6)も,妊娠ラットの全血,血漿,赤血球Se濃度と赤血球,血漿GSHPx活性を測定した結果,血漿および全血Se濃度は,妊娠により著明に低下し,血漿GSHPx活性は妊娠末期では血漿たんぱくmgあたりで約40%減少した。妊娠ラットの臓器,組織中Se濃度の変化をみると,骨中Se濃度は非妊娠時と比較して妊娠末期には有意な低下が認められた。 本研究では,ヒト全血,血漿,赤血球Se濃度および赤血球,血漿GSHPx活性の妊娠による変化について検討を加えた結果を報告する。
日本衛生学会の論文