ウルソデオキシコール酸・コレスチラミン併用療法によって頑固な皮膚掻痒感が消失した原発性胆汁性肝硬変の一症例 : 血清胆汁酸分画の解析
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概要
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症例は51歳,女性で皮膚掻痒感を主訴とし,血清胆道系酵素の上昇と抗ミトコンドリア抗体,抗PDH抗体陽性所見及び肝生検により原発性胆汁性肝硬変(PBC) stage I-IIと診断された.ウルソデオキシコール酸UDCA (600mg/日)毎食後経口投与開始後,血清胆道系酵素値,AST, ALT, IgMが改善されたが,強い皮膚掻痒感は持続したため,UDCAを毎食間に,CS (12g/日)を毎食前に経口投与する併用療法を開始し,同併用療法開始後皮膚掻痒感は速やかに軽減し始め,30日後に完全に消失した.血清胆汁酸の経時的分析の結果,治療開始前健常時に上昇していた血清総胆汁酸値はUDCA投与によりさらに上昇し,その60%はUDCAにより置換された.さらに,UDCA・CS併用療法によって血清総胆汁酸値はほぼ健常者の値に減少し,UDCAは全分画の約30%に保たれ,同時にCDCAの減少が認められた.生検肝における胆管上皮細胞の乳頭状増生の超微形態像は胆汁成分の再吸収促進を示唆する所見として興味深い.本症例で試みられたUDCA・CS併用療法は,両薬剤の投与の仕方によっては血清総胆汁酸プールを健常レベルに低下させながらUDCAを30%以上に保ち,特に脂質親和性CDCA濃度低下をさせ,それによって皮膚掻痒感の改善とともにUDCAによる血液生化学的検査値の改善を維持することが可能であり,今後皮膚掻痒感を伴うPBCの治療に有用であると考えられた.
著者
-
大部 誠
北里研究所メディカルセンター病院病理
-
横森 弘昭
北里研究所メディカルセンター病院内科
-
亀谷 宜隆
慶応義塾大学消化器内科
-
石井 裕正
慶応義塾大学 医学部 消化器内科
-
織田 正也
慶応義塾大学内科
-
本告匡 匡
北里研究所メディカルセンター病院内科
-
大部 誠
北里研究所メディカルセンター病理
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