DEM を用いた秩父天然林における小地形の抽出とブナとイヌブナの分布特性
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概要
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樹木の分布特性と地形との関連性をより詳細に検討するため,秩父天然林に設定されたLTER-site の東側部分(1.69ha)において測量を行い,DEM を作成した。DEM の解像度を既存の25m コドラートを9 等分する8.33m メッシュの小コドラートに合わせ,これを用いて小コドラートの傾斜角度,凹凸度を抽出した。ブナ,イヌブナそれぞれの分布(在/不在)と生育量(BA合計; 胸高断面積合計)にこれらの地形変量が影響を与えているか否かを,林分の優占種であるブナ,イヌブナ,ツガの他個体の影響を考慮したモデルで解析した。在/不在モデルからは,ブナにおいて地形に非依存的な分布特性が示された。一方,イヌブナにおいては傾斜角度や凹凸といった斜面地形が関与する分布特性が認められた。生育量モデルからは,両種ともに傾斜や凹凸から有意な影響を受けておらず,ブナないしイヌブナの他方樹種のBA 合計のみが有意に負の影響を与えたことが示された。以上より,本調査地では2 種の分布のみに地形選好性の差異がみられるが,これによって両種の分布パターンが明瞭に分割されるわけではないこと,量的な分布には地形よりも近隣の同属他個体の生育による負の影響のほうが大きいことが明らかになった。The relationship between topographical features and the distributional properties of tree species was examined using “topographic variables” profiled from fine-resolution digital elevation models (DEM) and distributional properties of two beech species, Fagus crenata and F. japonica, both of which are dominant species in the natural forests of Chichibu. In and around the study area, a DEM with a resolution of 8.33 m was created by dividing 25 × 25 m quadrats into nine equal-sized small quadrats to profile the inclination and convexity of the study area and also to evaluate the distribution and abundance of the two Fagus species. Two spatial analysis models were created, both of which had independent variables of topography (inclination and convexity) and the effects of other dominant canopy trees nearby. The dependent variables in the first model were the presence/absence of each of the beech species. This model showed that the distribution pattern of F. crenata was independent of topography. The distribution pattern of F. japonica was related to both inclination and convexity. The dependent variables in the second model were the total basal area of DBH (BA) of each beech species. Although the effects of topographic variables were insignificant for both species, a significant negative relationship was found between total BA of focal beech species and that of the other beech species in the neighborhood. This was an interference effect. Two main conclusions were drawn: topographical features related to the distribution pattern of only F. japonica, and the co-dominance of the two beech species in this forest might not be established using this small-scale topography.
- 2010-07-25
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