ヒノキ・ヒノキアスナロ漏脂病の発生機序
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
漏脂病はヒノキやヒノキアスナロ(アテ)の生立木樹幹から樹脂が異常に流出する現象であって,大正初期から林業上問題とされてきた。本病の病因については,いままでに雪圧説,害虫説,病原菌説などがあって,充分に納得できる説明が得られていなかった。ヒノキやヒノキアスナロの漏脂病の発生実態について詳細に調査した結果,漏脂病の病徴には,初期病徴として樹脂流出型,初期病徴の癒合・進展した型として漏脂型,さらにこれらの病患部に菌類が関与した溝腐型があり,この3つが漏脂病の典型的な病徴と考えられた。このような病徴を示す病患部は,地上1~2mの高さに最も多くみられた。このような病患部の樹幹上における発生状況は,積雪深と関係が深く,経時的に推移するものと考えられた。漏脂病の発生誘因について検討した結果,漏脂病は雪や寒さといった気象的因子を誘因として,内樹皮に傷害樹脂道を異常形成させて,樹脂流出型の初期病徴が形成されるものと考えられた。ヒノキやヒノキアスナロ生立木が,このような環境ストレスを引き続いて被るか,あるいは初期病徴が癒合・拡大して漏脂型へと進展し,また,凍裂などの物理的損傷部位や漏脂型病徴を呈する部位に菌類が関与すると,溝腐型病徴へ移行するものと考えられた。そして,このようなヒノキやヒノキアスナロ生立木からは,樹脂が異常に流下し続けるものと考えられた。The "Rooshi" pitch canker of Hinoki (Chamaecyparis obtusa) and Ate (Thujopsis dolabrata var. Hondai) is frequently observed in heavy snowfall regions as well as the northern part of Japan. Reforestation with Hinoki has become so widespread that the pitch canker is becoming one of the most serious disease. Empirically, the "Rooshi" pitch canker of Hinoki is supposed to be one of the restriction factors on natural distribution of Hinoki forest in Japan. However, there are few scientific papers on the disease. The cause of the disease has not been explained enough. From our survey, the "Rooshi" pitch canker is considered to be a disease complex rather than a discrete canker disease. The classic symptoms of the disease are classified into three types, that is, a bleeding type, a resinous sink type, and a grooved pitch canker type on the trunk of living tree. In this study, we discussed on the mechanisms of the development of "Rooshi" pitch canker. A bleeding type is supposed to be an incipient stage of "Rooshi" pitch canker and caused by abiotic stress factors such as cold and snowfall. This incipient stage of the disease develops to a resinous sink type on the trunk. And, finally, a grooved pitch canker is formed on the trunk accompanying fungi such as Sarea resinae and Pezicula livida (Cryptosporiopsis abietina).
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学農学部林学科,新潟大学農学部林学科,Department of Forestry, Faculty of Agriculture, University of Tokyo,Department of Forestry, Faculty of Agriculture, Niigata Universityの論文
著者
関連論文
- DEM を用いた秩父天然林における小地形の抽出とブナとイヌブナの分布特性
- ケヤキ衰退木の光合成・蒸散速度
- 梢端枯れ木および腐朽被害木の葉の光合成速度,蒸散速度,および葉の形態 : 東京大学柏キャンパス内のカツラ街路樹の事例
- 梢端枯れをおこしたカツラ植栽木の葉の水ポテンシャル及び土壌特性
- 葉緑素計を用いて判定したケヤキの活力度と葉の光合成・蒸散速度の関係
- シラカシとヒサカキにおける葉内生菌の内部分布の比較
- 秩父山地における林冠の撹乱規模の異なるイヌブナ天然林の20年間の再生過程
- いずみ野駅前通桜並木における根株腐朽診断法の検討
- いずみ野駅前通桜並木におけるベッコウタケの分布
- 横浜市小黒公園サクラ集団枯損の現況調査
- コブサルノコシカケモドキが発生した「横浜市指定名木古木サルスベリ」の診断と治療経過(臨症事例)
- 中国内蒙古自治区に生育する臭柏(Sabina vulgaris Ant.)の地下水面からの距離と種子充実率
- カツラ衰退木の生理特性
- 町田市・中野区の街路樹における腐朽菌子実体が発生したサクラ類樹体内の腐朽分布
- 太平洋型ブナ林 (三国山) におけるブナ実生の発生の年変動
- 学会報告 樹木医学会第13回大会報告
- 秩父山地イヌブナ-ブナ林の齢構造と更新特性
- A17) ブナ天然林の保護樹帯は林冠の再生構造と林床植物種の組成を維持できるか? : 天然林コリドーとしての保護樹帯の意義(口頭発表, 野生生物保護学会 2000 年大会大会報告 : プログラム)
- 太平洋型ブナ林におけるブナ実生の定着過程I : 三国山における当年生実生の消長
- 豪雪地帯におけるブナーミズナラ二次林 : 主要構成樹種の生長パターン
- コブサルノコシカケモドキが発生した「横浜市指定名木古木サルスベリ」の診断と治療経過
- クスノキ衰退木の処置と樹体の生理状態
- 秩父山地スギ人工林の梢端枯れ現象
- 名勝小金井桜における木材腐朽菌類の発生状況
- 中国内蒙古自治区に生育する臭柏(Sabina vulgaris Ant.)の地下水面からの距離と光合成・蒸散速度の関係
- 標高変化に伴うブナ葉内生菌相の変化に関する研究
- ブナ葉内生菌の地理的分布に関する研究
- サクラ植栽樹における根株腐朽菌子実体発生の移り変わり
- カツラ梢端枯れ木のシュートの形態特性
- ブナ類2種(Fagus crenata Blume and Fagus japonica Maxim.)の豊凶現象が樹体の成長に与える影響
- PBL(問題解決型授業)を指向した「技術者倫理」の運営
- ケヤキ異常木の生理特性 : サーマルカメラを用いた樹冠温度の計測(一般講演(口頭発表),第3回大会講演要旨)
- (17) マツ材線虫病の進展におけるモノテルペンの役割 (平成10年度関東部会)
- 林道開設後のツガの衰退と水分生理状態(第1回大会講演要旨)
- 台湾中部山地のニイタカトウヒ天然林における主要樹種の垂直分布
- 樹木の診断と治療(第106回日本林学会大会テーマ別セッションの概要記録)
- 秩父地方の山地渓畔林におけるシオジおよびサワグルミ実生の消長
- 病原性の異なるマツノザイセンチュウおよびニセマツノザイセンチュウを接種したクロマツ木部の解剖学的変化および通導阻害
- マツ材線虫病におけるクロマツ苗の光合成と水分生理状態
- 秩父山地におけるシオジ林の林分構造と更新過程
- A16) ブナ天然林の保護樹帯における林床植物種のハビタットコリドーとして有効な幅(口頭発表, 野生生物保護学会 2000 年大会大会報告 : プログラム)
- 豪雪ブナ林地帯における薪炭林再生過程に関する生態学的研究
- ミズナラ二次林の堅果生産能力と薪炭林の伐採周期からみた実生更新の可能性
- 薪炭林としての伐採周期の違いがブナーミズナラ二次林の再生後の樹種構成におよぼす影響
- 千葉県北西部の都市近郊林における樹木葉内生菌群集
- 「樹木病害デジタル図鑑」, (独)森林総合研究所森林微生物研究領域編, CD版, 発行 平成21年3月, 全国森林病虫獣害防除協会, 定価3,000円(税込,送料別)
- オオシラビソの分布パターンと後氷期とヒプシサーマルの影響
- マツ材線虫病の被害による外生菌根菌群集の多様性の低下
- 東京大学北海道演習林が目指す「理想の森林」づくり (豊かな水を育む森林(水源林の役割)--森林総合研究所シンポジウムの概要)
- ヒノキ・ヒノキアスナロ漏脂病の発生機序
- 林冠伐採に対するブナ稚樹の成長反応
- コンパクトMRIからみたマツ材線虫病における通水阻害と線虫分布との関係
- 「樹木医が教える緑化樹木事典」, 矢口行雄監修, 誠文堂新光社, 336pp., 2009年6月発行, ISBN-10:4416409060, ISBN-13:978-4416409060
- マツ材線虫病における通水阻害進展様式の解明に向けたコンパクトMRI多点撮像法の開発
- 難波成任監修, 「植物医科学(上)」, 養賢堂, 2008年7月, 336pp., 2,940円
- 「樹木学」, 濱谷稔夫著, 地球社, 2008年, 425pp., 4,000円, ISBN978-4-8049-5105-8
- 山地の森林と都市近郊林における樹木内生菌相の比較
- 樹木医学会第11回大会シンポジウム「これからの樹木医学」
- 樹木医学会第10回大会シンポジウム「これからの樹木医」
- マツノザイセンチュウ接種クロマツ苗のMRIによる非破壊観察(一般講演(口頭発表),第8回大会講演要旨)
- 第5回現地検討会(赤松街道)に参加して
- 森林微生物生態学, 二井一禎・肘井直樹編著, A5判, 322ページ, 朝倉書店, 2000年11月, 本体6,400円
- ナラタケの生物学的種
- 材線虫病による年越し枯れアカマツ材部の電気抵抗値および葉の水分生理特性の経時的変化
- マツ材線虫病の病徴の進展と水分生理特性の変化
- トドマツの漏脂症
- クロマツ苗の材線虫病における水分特性の変化と水分欠乏による変化との比較
- 材線虫病の病微進展に及ぼす環境の影響 : ギャップ効果
- スギこぶ病の解剖学的観察
- 二, 三の落葉広葉樹の日肥大生長量および日伸縮量とそれらを左右する環境要因
- 二, 三の落葉広葉樹の幹径の日変動量とそれを左右する環境要因
- 秩父山地イヌブナ(Fagus japonica MAXIM.)天然林における堅果落下量と実生の消長
- 異なる季節に与えた物理的傷害に対する4樹種の反応
- 亜高山帯モミ属林における林分の発達と実生の定着の関係
- 森林の生態学-長期大規模研究からみえるもの-, 種生物学会編, 責任編集:正木隆・田中浩・柴田銃江, 文一総合出版, 2006年3月, 383ページ, 3,990円(税込), ISBN4-8299-1066-6(ブックス,Information)
- 結実季節の異なる鳥散布植物を利用した自然植生の誘導
- 研究紹介 道路周辺の緑化における鳥散布植物の導入に関する研究
- 新潟大学佐渡演習林のスギ-ブナ天然林における択伐が構造と更新に与えた影響
- 新潟大学佐渡演習林のスギーブナ天然林における択伐が構造と更新に与えた影響
- 天然下種更新施業後のブナ林における結実と堅果散布に与える母樹密度の影響
- 海岸アカマツ林におけるコナラの繁殖習性
- ブナ林の生態学的研究-37-鳴海と日尊の倉ブナ天然林のギャップ更新について
- 豪雪地帯におけるブナ二次林の再生過程に関する研究(III) : 平均胸高直径の異なるブナ二次林6林分における種子生産
- 豪雪地帯におけるブナ二次林の再生過程に関する研究(II) : 主要構成樹種の伐り株の樹齢と萌芽能力との関係
- 佐渡演習林におけるスギ天然林の更新に関する2,3の調査
- 苗場山におけるオオシラビソ天然林の構造について-1-閉鎖林分における階層構造と分布様式について
- 落葉広葉樹が混交する多雪地のスギ人工林における林床植物相 (中山間地における人工林が地域の生物多様性に及ぼす影響--生物多様性の保全・回復を考慮した人工林管理)
- 広葉樹二次林の生態的管理と生物相の保全(テーマ別セッション)(第107回日本林学会大会)
- 積雪とブナ林の分布 : ブナ林分布のメカニズムをめぐる諸説とその検証(第106回日本林学会大会テーマ別セッションの概要記録)
- 豪雪地帯におけるブナ二次林の再生過程に関する研究-1-樹幹の曲がりとそれが階層構造の形成に及ぼす影響について
- ケヤキヒトスジワタムシ (Paracolopha morrisoni) による虫えいがケヤキ街路樹の葉の光合成に与える影響
- 異なる季節に与えた物理的傷害に対する4樹種の反応
- カツラ梢端枯れ木の葉の生理的・形態的特性
- IKONOSデータを利用したマツ枯れ被害林分の抽出
- エゾシカ低密度生息域の天然生林における剥皮発生リスク要因:シカの生息地利用特性と樹木個体の特性に基づく分析 : シカの生息地利用特性と樹木個体の特性に基づく分析
- 秩父山地イヌブナーブナ林の齢構造と更新特性
- DEMを用いた秩父天然林における小地形の抽出とブナとイヌブナの分布特性
- Seasonal impact of deer browsing on the demography of Fagus japonica seedlings in a cool-temperate forest (特集 シカの採食圧による植生被害防除と回復)
- 林床における種々の更新補助処理によるエゾマツ実生消長の差異(会員研究発表論文)
- 北方針広混交林の林冠下における光環境と稚樹の成長と葉の形態(会員研究発表論文)