マツ材線虫病の病徴の進展と水分生理特性の変化

概要

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17年生のアカマツを用いて材線虫病の接種試験を行い, 接種後のアカマツの病徴の進展を観察するとともに, 樹脂滲出量, 水ポテンシャル, および蒸散量の測定を行い, 水分生理状態の変化について検討を加えた。同時に, 葉のP-V曲線を作成し, 初発原形質分離点(ψ_W^<tlp>), 細胞壁の体積弾性率(ε)などの水分生理上の諸特性の変化について検討した。接種した供試木では, 接種8日後に樹脂滲出量の異常が現れ, 接種約1カ月後には, 樹脂滲出の停止, 水ポテンシャルおよび蒸散量に表される水分生理状態が著しく低下して, 枯死に至った。枯死した供試木のP-V曲線には著しい変化は認められず, ψ_W^<tlp>の値は終始-2.0MPa前後の値を示した。しかし, 病徴の末期と考えられる9月中旬以降に, 細胞壁弾性率(ε)の上昇に伴う変化が認められた。一般に, 水分欠乏に伴う樹木の反応には, 浸透調節によるψ_W^<tlp>の低下が知られているが, 今回の材線虫病の接種木においては, 浸透調節作用は認められず, 細胞壁の弾性率にのみ変化を生じた。このことから, 材線虫病の進展に伴う葉の水分特性の変化は, 水分欠乏に伴う萎凋枯死の過程とは異なる, 材線虫病に特異な現象であるものと考えられた。
1988-09-01