縞枯現象における樹木枯死の推移
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概要
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大規模な縞枯現象がみられる長野県八ヶ岳連峰縞枯山の南西斜面の林分において,林分構造の推移と更新様式の詳細を明らかにした。過去の空中写真を解析した結果,1959年の台風によって発生した大規模な風倒地では,疎な稚樹帯を経て林分が更新したが,稚樹帯,若木帯,成木帯,枯死木帯という連続的な縞枯林の構造が崩れていることが明らかとなった。一方,縞枯現象の通常の更新様式についてみると,実生は成木帯林内で発芽・定着し,その後,成木が枯死すると成長速度が増大して,樹高に差のある密な稚樹帯を形成することが明らかになった。また,詳細な樹木枯死の発生を検討するために,1992~ 2001年の10年間について同一林分を調査した。その結果,成木帯林内部では比較的小さな樹木の枯死がみられ,枯死木帯に面する林縁部樹木において枯死が多く発生した。林縁部樹木の生理状態については,シラベ・アオモリトドマツの針葉に障害はみられなかったが,針葉の水分特性値からは,秋から冬にかけて耐凍性や耐乾性が他地点の樹木よりも高い傾向がみられ,林縁部は環境ストレスが高いと推測された。また,調査区内の樹木の枯死頻度は一定ではなく,10 年間の調査のうち二度枯死率が増大した期間がみられた。枯死率が増大した時期の直前の冬季には,15 m/s 以上の日最大風速が観測され,また,日平均風速が6m/s以上の日数も多い傾向がみられた。このような強風が林縁部樹木にさらなるストレスを与え,枯死を導いたものと推測された。In the southwest slope of Mt. Shimagare, where wave regeneration (“Shimagare”) is common, the transition of forest regeneration, physiology of mature trees, and growth of saplings were investigated. From analysis of aerial photographs, it was clarified that windthrow occurred in a large area in 1959, and then saplings regenerated sparsely. In wave regeneration, it was clarified that seedlings germinated even under mature trees. After the mature trees died, the saplings increased their growth rate, and their height fluctuated due to saplings’ competition. To discuss the transition of mature trees, a quadrat was investigated from 1992 to 2001. While mature trees died mainly in the edge of the stand, relatively small trees died widely in the quadrat. There was no obvious damage in needles of Abies trees there, however their freeze and drought resistances tended to increase in autumn. Therefore, it seemed that environmental stress was high in the edge of the stand in that season. Mature trees’ mortality was not constant annually at the quadrat but increased at the particular periods. In the winters just before high mortality, the region was exposed to strong winds which are daily maximum speeds exceeding 15 m/s and daily average 6 m/s. It seemed that such a strong wind in winter might increase certain stress on the mature trees of the stand edge and then lead to death
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻,林野庁,日本放送協会,Department of Forest Science, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo.,Forestry Agency of Japan.,Japan Broadcasting Corporation.の論文
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