学び合う授業の実現に向けて,教師は如何に談話方略を運用しているのか
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の目的は,学び合う授業の実現に向けて,教師は,児童の実態に応じながら如何に談話方略を運用しているのかを明らかにすることであった。学び合う授業づくりに熟練した教師が担任となった学級を対象に,縦断的な授業観察,教師へのインタビュー調査を行った。結果,教師は,(1)発言への消極性・伝え合う意識の低さを児童の実態と認識していた時期は,(a)児童の発言をそのまま言い直す働きかけを通して,児童に肯定的な評価を示し安心して発言できるようにする事や,他の児童に発言の内容を正確に伝える事を,(b)個人内の思考を明確にさせる働きかけを通して,伝え合うために必要な話し方や思考の仕方を学ばせる事を,図っていた。そして,(2)発言への意欲・伝え合う態度の芽生えを児童の実態と認識し始めた時期からは,(a)児童の発言に新たな意味を付与して言い変える働きかけや,(b)考え相互の関係性を思考させる働きかけを通して,児童が互いの考えを相互に繋いでいけるようになる事を,図るようになっていた。教師がそのように児童の実態に応じて談話方略を使い分けていたことが,徐々に児童主体の学び合いを授業の中に定着させていくことへと繋がったことが示唆された。
- 日本教授学習心理学会の論文
- 2011-12-18
著者
関連論文
- 概念変化を捉える新たな枠組みとしての状況 : 概念相互依存的変動システムの検証:心的特性の起源に関する認識の発達を中心に
- 時間的広がりを持った感情理解の発達変化 : 状況に依拠した推論から他者の思考に依拠した推論へ
- 他者とのやりとりに伴う身体運動感覚は幼児の比喩理解を促進するか
- 小学生版J-GELOPHの構成と信頼性・妥当性の検討
- 熟達した噺家の語りにとして現れる中心的な概念 : 共起ネットワークマッピングによる噺家の信念地図の作成
- PF044 学び合いを支える自己・他者・状況モニタリングと共感的態度との関係
- 小学校でディスカッション技能を育むためには何が必要か
- なぜ"不調和解決"は"不調和"よりおもしろいか
- 演芸状況でのユーモア生成プロセスのモデル化 : 構造方程式モデリングによる検討
- ユーモア生成過程にみられる演者と観客による関係システムの解明
- おもしろさのオンゴーイングな評定と事後評定との関係
- 個体間協調運動の定量化手法の検討 : ユーモア生成過程における協調行動の定量化
- 身体知に媒介されるユーモア生成過程 : 演者と観客の引き込み現象による検討
- 演者と観客の"引き込み現象"を定量的に計測するための手法の提案と評価
- 落語の演者が用いる語りの方略がおもしろさに与える影響
- PD2-39 レポートの質を高めるための行動とADOGとの関連(教授・学習)
- 幼児における時間的広がりを持った感情理解の発達 : 感情を抱く主体の差異と感情生起の原因となる対象の差異の観点から
- 教室談話における「発言相互の繋がり」を可視化する分析方法の開発と適用
- 他者とのやりとりの有無によって幼児の比喩理解がいかに異なるか
- PG2-24 中規模談話データを用いた「教室内機能語」の分類と信頼性の検討(教授・学習)
- PB072 単語間推移性分析による知的交流過程の可視化
- 授業場面に潜む"暗黙のルール"と発言スタイルとの関連
- J063 クリティカル・シンキング : 小・中・高等学校における教育実践の発達的検討(自主シンポジウム)
- PG061 教師のきく行為を支える授業過程 : 机間指導に注目して
- 子どもが主体的に考え,学び合う授業を熟練教師はいかに実現しているか : 話し合いを支えるグラウンド・ルールの共有過程の分析を通じて(IX 優秀論文賞を受賞して(2007年度))
- 児童の話し合い場面におけるコミュニケーション・モデル構築の試み
- 複式学級に属する児童の異年齢集団による継続的話し合いの変容分析 : 協同問題解決型課題を用いて
- 議論過程における一般協同問題解決方略の有効性
- 集団規模と集団成員同士の親密性とが協同問題解決型議論の相互作用に及ぼす影響 : 情報統合型課題を用いて
- 協同問題解決型議論の学習効果
- PE048 対話活動が道徳性の変容に及ぼす効果 : 道徳の授業を通して
- K276 認識的信念尺度の作成(口頭セッション46 教授学習過程2)
- PB2-34 学び合う授業を支える板書行為(教授・学習)
- 主体的に考え,学び合う授業実践の体験を通して,子どもはグラウンド・ルールの意味についてどのような認識の変化を示すか
- PF052 子どもが主体的に学び合う授業を可能にする日常文脈の活用
- 子どもが主体的に考え,学び合う授業を熟練教師はいかに実現しているか : 話し合いを支えるグラウンド・ルールの共有過程の分析を通じて(実践研究)
- 授業場面でのディスカッションの意義を求めて
- 対人認知において自他の性格・知的側面に注目する傾向は「性格・知的特性の規定因」の理解を促進するか(行動系)
- 心的特性及び身体的特徴の起源に関する素朴因果モデルの発達的変化
- テスト勉強の学習計画と実際の学習活動とのズレに対する認識
- 目標の違いによって,ディスカッションの過程や内容がいかに異なるか
- 16 対話する授業の生成 : 教師の実践知を描き出す試み(自主シンポジウムD)
- 原理に対する理解及び操作体験が工具操作能力の改善に及ぼす効果(実践研究)
- PE71 素人は説明が「科学的」であることの条件をどう認識しているか(教授・学習,ポスター発表E)
- PB16 複眼的思考を育む家庭での会話とは?(発達,ポスター発表B)
- 素人は日常的説明をどのような基準のもとに評価しているのか : 日常の文脈での根拠性と科学的な文脈での根拠性の比較
- ディスカッション過程での論証方略とメタ認知的発話の分析
- PC63 教師の「話し合い活動」についての認識 (1) : 教師は「話し合いのうまさ」をどう考えているか
- 心的・身体的特徴の形成過程における生み・育て・自分の意図の影響力についての認識の発達的変化
- PD13 心的特性の起源についての素朴因果モデルの発達(発達,ポスター発表D)
- 心的特性の起源についての素朴理論の発達
- 家庭での会話の発達的変化
- PC67 大学生の授業中の発言スタイル(2) : 「複眼的思考」の水準が及ぼす影響
- PG80 複眼的思考尺度の構成
- 他者との協同構成過程での知的方略の内面化はいかにしたら促進されるか
- 協同問題解決場面での知的方略の内面化過程の検討 : エラー分析を用いて
- 思春期に不登校を呈した学習障害のある一少年への支援 : その少年の学習行動や対人行動の変容過程
- 他者との協同構成によって獲得された知はいかに安定しているか
- 15 子どもの聴く力・話す力を育むには(自主シンポジウム)
- 小学校教諭が認識している対話型授業が持つ利点とは : 「教師主導型」、「教師-生徒対話型」、「生徒間対話型」の3授業タイプの比較を通じて
- 個人の認識論についての多重時間スケールモデルの提唱
- 「協働による知識構築活動」への参加の進展過程を可視化する分析技法の開発と適用(新時代の学習評価)
- 授業での小学生の質問生成プロセスは課題志向性の水準によってどのように異なるか
- 授業研修会の参加を通した教師の学習過程に関する検討 : 協働学習型授業への推移を可視化する分析技法の適用
- 「協働による知識構築活動」の参加の進展過程を可視化する分析技法を用いた教師の熟達化過程に関する検討
- 「子ども主体の学び合い」を支える教師の働きかけに関するモデルの検討
- 子どもの比喩生成・理解過程における研究レビューと新たなモデルの提案
- 教師の意図していない教授・学習過程ではいかなる心理的やりとりが行われているか : 主体的側面に焦点を当てた二面的開示分析を用いて
- 学び合う授業の実現に向けて,教師は如何に談話方略を運用しているのか
- 児童の共感性育成研究の展望
- 中学生の質問行動と動機づけ・学業成績との関連
- 質問作りを中心にした指導による児童の授業中の質問生成活動の変化
- 教室での学習者の質問生成に関する研究の展望
- PD103 小学校において質問が生じやすいのはどのような授業なのか : 「授業(社会,理科,学級会)の特徴の違い」による質問生成活動の程度の違い(ポスター発表D,研究発表)
- 小学生は授業中に質問を思いついているのか : 疑い知ろうとする気持ちの生起と教師に対する質問生成・表出との関連
- PE81 どうすれば小学生は授業で質問することができるようになるか(2) : 質問生成を中心にした対話型模擬授業セッションの質的分析(教授・学習,ポスター発表E)
- どうすれば小学生は授業で質問することができるようになるか : 質問生成を中心にした対話型模擬授業セッションによる介入の試み
- 如何にしたら,児童達は,学び合う授業の中で「自分の考え」を積極的に発言できるようになるのか
- 学び合う授業の中で育まれる認知的・情動的共感性 : 学び合う授業が実践されるようになった1学級を対象にして
- PC056 子どもたちの話し合い・学び合いを中心とした授業実践力を育むには(1) : 実践家と研究者による学び合いの場作りの歩み(ポスター発表C,研究発表)
- P4-60 授業における教師の感情状態と児童の発言への応答との関連(教授・学習,ポスター発表)
- 素朴発達モデルに依拠した「話し合い活動」の活性化(自主シンポジウムE-3)
- PA059 協同問題解決場面におけるやりとりの内面化プロセス(ポスター発表A,研究発表)
- PA031 過去の出来事と現在の感情とのつながりに関する幼児の理解(ポスター発表A,研究発表)
- PA065 小学生における心的特性の起源に関する認識の発達と対人比較で心的側面に注目する傾向の強さの関連(ポスター発表A,研究発表)
- 議論力・思考力を育む教育実践とその理論的,実証的研究(自主シンポジウムD-1)
- PG053 学習目標の違いに応じて大学生はいかに学習時間を配分しようとするのか(ポスター発表G,研究発表)
- PC057 子どもたちの話し合い・学び合いを中心とした授業実践力を育むには(2) : 授業中の即興的な働きかけを支える熟練教師の実践知(ポスター発表C,研究発表)
- PH045 レポートの質を高めるためのプランニングとその推敲過程(ポスター発表H,研究発表)
- 小学生の話し合う力をどう見取るか : 発達研究に依拠した実態調査を手がかりに(自由研究発表)
- 学び合う授業の実現に向けて,教師は如何に談話方略を運用しているのか
- F7. 自己調整学習における協同の役割(自主企画シンポジウム)
- B8. 授業研究の最前線 : 「協同学習」を教育心理学的アプローチから多面的に捉える(自主企画シンポジウム)
- G7. 教室談話研究の現在と展望(自主企画シンポジウム)