木造住宅の需要と供給に関する研究(II) : 鹿児島県の大工・工務店の現状と問題点
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概要
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本研究は, 木造住宅の消費者と生産者が木造住宅の現状と問題についてどのように考えているのかをアンケート調査を通じて明らかにし, 今後の木造住宅政策立案のための基礎資料を提供しようとするものであり, 鹿児島県を事例としてとりあげた.工務店に対するアンケート調査は1994年12月に実施した.対象は736の工務店であり, 138社から回答を得た(回収率18.8%).得られた結果は以下の通りである.1.木造住宅に使用する木材のうち国産材の占める割合は, 全国のそれに比較して高い.使用している部材樹種は, 敷居は除けば, スギが中心であった.敷居ではヒノキが使用される割合が高い.2.国産材製材品について人工乾燥材が含まれているか聞いたところ, 23.9%の工務店が含んでいると答えたが, 67.4%の工務店は含まれていないとしている.人工乾燥材の使用が望ましいか尋ねたところ, 35.5%の工務店は「望ましい」としているが, 約半数の46.4%「必ずしも必要はない」と答えている.人工乾燥材の問題点を聞いたところ, 代表的な見解は材の割れ, 変形とコスト高の2点であった.3.およそ7割の工務店がカタログを希望している.また, 国産材製材品の購入について困っていることは, 品質のばらつき, 不十分な乾燥, 価格変動の3点に要約される.外材についても品質問題と価格変動が主な問題点であることが知れた.4.この10年間の工務店の常時雇用技能者数は減少した工務店数がやや多く, また, 年齢構成の現状は, 40歳未満の若年層が少なく(21.6%), 60歳以上が15.7%を占め, 高齢者層も貴重な労働力となっている.また, 工務店においては常時雇用者の勤務条件の整備はまだ進んでおらず, 年次有給休暇制度のある工務店は20.3%, 週休2日制を実施していない工務店が56.5%であった.若手技能者の確保のためには, 社会保障や福利厚生よりも勤務条件(時間及び賃金)の改善が必要であると認識されている.5.木造住宅を販売するにあたり, 19.6%の工務店が木造の「良さ」をPR材料にしていることがわかった.さらに, 「木造住宅が地球環境保全という視点から見直されていることをPR活動に使用していますか」という問に対して, 「使用している」と答えた工務店が13.8%にのぼった.6.木造住宅の販売推進に関する政策課題として, 「木材に有利な融資条件の設定」を最も優先すべきであるとした工務店が64.3%あった.「林業・木造住宅等の関連業界の連携」を最優先とする工務店は最も少なかった(4.5%).工務店の多くは, 林業との連携や地域一体型の木造住宅供給への関心は低い.この原因究明については今後の研究課題として残されたが, 林業政策としてこれに対する関心を高めることが必要である.
- 鹿児島大学の論文
- 1998-03-31
著者
-
松下 幸司
京都大学
-
松下 幸司
京都大学農学研究科
-
服部 芳明
地域資源環境学
-
寺床 勝也
地域資源環境学
-
藤田 晋輔
地域資源環境学
-
瀬戸口 恒夫
永大産業株式会社
-
服部 芳明
鹿児島大学農学部
-
寺床 勝也
鹿児島大学教育学部
-
服部 芳明
鹿児島大学農学部生物環境学科
-
松下 幸司
京都大学農学部
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