森林情報システムに関する研究(II) : 九州の森林組合におけるコンピュータ導入の現状
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概要
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沖縄県を除く九州各県において, 1990年度末現在でコンピュータを導入済みの77の森林組合を対象に調査表を送付し, 60の組合から有効回答を得た.回答を集計した結果, 以下のことがわかった.1.導入の契機は県及び県森連の指導が大きい.事務の合理化が導入の主目的で, 森林管理も目的になっている.導入台数は1台の森林組合が多い.1989年に導入を検討し, 1990年に導入した森林組合が最も多い.これは国の補助事業による影響である.オフコン, 32ビットパソコンの順に導入されている.半数以上の森林組合は機器の導入台数に満足している.導入はリース形式が52%を占める.2.利用者は5人以下が大半で, 10組合については1名だけである.利用者の年齢層は20代及び30代が中心である.男女別では男性が55%とやや多く, 事務系・技術系別では事務系が87%と圧倒的である.プログラムを組める利用者は4%である.3.一般事務ソフトである財務会計, ワープロ, 給与管理, 組合員管理のソフトがよく導入されている.林業関係のソフトの導入率はまだ低いものの, 利用率は高く, 今後導入希望も多い.各事業部門の管理ソフトと通信ソフトの利用率が低い.通信はモデム自体はある程度普及しているが, ほとんど使われていない.しかし, 半数の組合が将来の利用に関心を示している.4.導入の利点は事務の効率化である.スピードアップにより, 実績の検討や事務処理自体の簡素化が進んだ例も見られる.5.導入の第1の問題点は人材不足である.オペレータの不足により, 特定の人に仕事が集中したり, 担当者がいないと仕事が進まない例も見られる.また, プログラムを組める人がいないため, 簡単な数値加工なども進まない.第2の問題点は導入機器への不満である.なかでも, 機器故障時の対応など, アフターケアーが問題になっている.第3の問題点は, ソフトの不備である.利用できるソフトが少ないこともあるが, 流通しているソフト自体にもかなりの不満が見られる.通常の汎用ソフトであれば通用しないようなソフトも, 林業という特殊な市場のため出回っている.6.多くの森林組合は森林管理への応用に興味をもっている.施業計画の作成, 流域毎の管理にはじまり, 作業道の最適設計, そして地域レベルの生産計画の樹立まで, 内容は多岐にわたる.7.行政及び県森連への要望としては, 第1に人材育成があげられる.利用者の拡大と, 指導者の育成が期待されている.第2は, 県レベルでの森林・林業情報センター等の設置が要望されている.全国レベルの情報システムの設計に対する要望も見られる.第3はソフトの統一化と開発経費への補助である.第4は, 森林に関する基本的データである森林簿の取扱に関する要望である.
- 鹿児島大学の論文
- 1993-03-31
著者
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