木材価格の変動と為替レート(I) : 輸入物価の検討
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概要
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変動相場制に移行後は, 外材価格だけでなく為替レートの変動もまた木材価格の変動要因の一つとなっている.木材価格変動と為替レートとの関係を明らかにする第一歩として, 日本の輸入物価・輸入数量全体の動きの中で木材価格・木材輸入がどのように変化してきたかを統計的に観察した.その結果, 以下のことがわかった.1.1985年以降の円高期にはどの産業分野でも一様に価格低下が見られたが, 変動幅には大きな差が観察された.木材・同製品, 金属は短期的な差は見られるが, 輸入物価指数のなかではそれほど低下が見られなかった品目である.中でも, 木材・木製品は円高以前の水準にまで上昇した.2.木材・同製品を丸太類・製材品・木材チップに分けて価格変化を検討すると, 製材品, 丸太類, 木材チップの順に変動が大きい.3.円高期には, 契約通貨ベースの価格が変化している.円ベースでそれほど価格低下が見られなかった木材・木製品および金属に関して調べると, 契約通貨ベースでの価格上昇が続いていたことがわかった.4.円高になり輸入価格が低下すると, 輸入数量は全体として増加する.しかし全体的な変化は直線的な増加であり, 価格変動ほどは伸縮的ではない.また, 加工製品・食料品の輸入は増加傾向を示すが, 原材料はそれほど増加しない.5.為替レートの変化により, 我が国の貿易構造は原料を輸入して加工するパターンから製品輸入の拡大へと変化してきているが, 木材についても同様である.この20年間, 製材品輸入が着実に増加している.6.2度の急速な円高進行期前後の動向より, 木材輸入価格は円高が急速に進行するときには, 一応低下傾向を示すが, 進行速度がやや小さくなったり逆に円安傾向があるときには, それ以上に上昇する傾向が観察された.以上の観察結果より, 今後の研究課題は次の通りである.1.急速に円高が進行する時期に, 通貨ベース価格が上昇するのはなぜか.円高に伴う短期的利益はどこに帰属するのか.2.これだけ大きな円高が進行しても, 日本の国内製材品価格が大きく低下しないのはなぜか.3.円高の時期における輸出国の戦略としては, 短期的には為替差益を確保するのが利益となるが.長期的には価格を引き下げ市場拡大を計るのが利益となる.輸出先はどのような行動基準をもっているのか.4.円高の時期に, 日本の輸入会社が輸出国の価格体系に影響を与えるような行動をとっている可能性がある.
- 鹿児島大学の論文
- 1991-03-15
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