木材, 建築資材とエコバランス(II) : 環境マネジメントとライフサイクルアセスメントをめぐる4業種の動向
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概要
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環境マネージメント規格ならびにライフサイクルアセスメントに関するアンケート調査を次の4業種を対象として実施した.(1)鹿児島県内の林家349名を対象に1998年12月に実施した.回答は92名から得た.回収率は26.4%であった.(2)鹿児島県下の木材, 製材業者1,001社を対象に1999年2月に実施した.回答は209社から得た.回収率は20.9%であった.(3)鹿児島県内の工務店562社を対象に1999年3月に実施した.回答は114社から得た.回収率は20.3%であった.(4)鹿児島市内にある建築設計士336事務所を対象にした.回答は35事務所から得た.回収率は10.4%であった.結果を要約すると以下の通りである.品質に関するISO9000シリーズ規格については, 「良く」あるいは「概略は」知っているとの回答の割合は, 建築設計士, 工務店, 製材業者・木材業者, 林家はそれぞれ31.7%, 39.5%, 15.6%, 12.2%であった.さらに, このそれぞれの割合に「聞いたことがある程度」と回答した割合を足し合わせると, それぞれ73.2%, 77.2%, 45.7%, 48.9%であった.このように品質規格であるISO9000シリーズ規格に対する関心は高かった.一方, 環境ISO規格については, 「良く」あるいは「概略は」知っているとの回答の割合は, 建築設計士, 工務店, 製材業者・木材業者, 林家はそれぞれ26.8%, 27.2%, 9.3%, 5.5%となった.このそれぞれの割合に「聞いたことがある程度」と回答した割合を足し合わせると68.3%, 68.4%, 36.0%, 45.5%となった.この環境ISO規格は, 品質ISO規格に比べると認知の程度は小さく, また, 製材業者・木材業者, 林家の認知度が建築設計士, 工務店に比べて小さかった.森林マネージメントに関する技術報告書ISO/TR14061に対する関心は, 建築設計士において高く, 「大いに」17.1%, 「少し」24.4%, 「どちらかといえば」関心があるを合わせると70.8%に達した.工務店, 製材業者・木材業者, 林家の場合には, 「良く」, 「少し」知っている, 「聞いたことがある程度」を合わせると, それぞれ17.5%, 17.5%, 28.9%であり, 林家では認知度が10ポイント程度高いことが知れた.住宅の企画, 設計する側の関心の高さからすると工務店, 製材業者・木材業者, 林家への広範な普及が望まれる.環境規格であるISO14001の認証取得の意思について調べた結果, 林家では, 所属する組織等が「認証の取得を望む」および「取得は望まないが, 環境マネジメントシステムの構築を望む」を合わせると, 65.6%もの大きな割合を占め, 林家の環境マネジメントシステム構築への関心は高いことが知れた.一方, 建築設計士, 工務店, 製材業者・木材業者では1割前後の事業者が数年以内に取得したい意向を持っていた.このように環境保全型の経営への転換の動向がうかがい知れた.ライフサイクルアセスメントについての関心の程度を工務店ならびに製材業者・木材業者に問うたところ, 関心をもっているとする回答は, それぞれ76.4%, 63.4%となり, 多くの事業者で関心が持たれていることが知れた.また, 環境主張の根拠としてライフサイクルアセスメントの手法を使おうという考え方を持つ事業者は, 工務店, 製材業者・木材業者それぞれ58.5%, 45.1%という高い割合で存在した.環境へ配慮した事業経営のためにLCAという手法を積極的に活用したいという意向が両業種ともにうかがえる.しかし, ライフサイクルアセスメントの規格については, 約5割の事業者が「知らない」と答えており, 関心はあるものの, その手法の枠組みについては知られていない.ライフサイクルアセスメントについての今後の普及が望まれる.
- 鹿児島大学の論文
- 2000-03-01
著者
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