馬の黄疽指数測定法に関する研究
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概要
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馬血清中のビリルビンの吸光を妨害する物質をアセトンで除去し, 黄疸指数測定に供する実験を行なった結果, つぎの知見をえた.1.馬の正常血清可視部には, 短波長側よりcarotenoidのシス異性体, ヘモグロビンのγ帯(soret帯), carotenoid, ヘモグロビンのβ帯及びα帯と思われる物質が存在し, ビリルビンはcarotenoidの吸収帯に包含されている.従って, 直接にはcarotenoidがビリルビンの吸光を妨害するが, このほかに, 吸収極大値の大きいヘモグロビンのγ帯とcarotenoidのシス異性体もビリルビンの吸光妨害に関与するものと考えられた.2.正常血清におけるこれらの物質は, アセトンにより血清蛋白とともに除去され, アセトン可溶分画にはビリルビンの吸収帯のみが残る.しかしながら, 溶血血清では, γ帯が完全に除去されない.従って, 溶血血清においては, ヘモグロビンのγ帯が, ビリルビンの吸光に若干の影響を及ぼすものと考えられた.3.アセトン法による馬の黄疸指数は, 血清ビリルビン量との間に, 強度の正の相関を有する.4.本実験で得られた各正常値は, つぎの通りである.a)黄疸指数(アセトン法)5.8±2.0 b)直接ビリルビン値0.306±0.094mg/dl c)間接ビリルビン値0.731±0.332mg/dl d)総ビリルビン値1.111±0.431mg/dl e)総ビリルビン係数0.200±0.014 f)ビリルビン比0.702±0.106 5.黄疸指数, 総ビリルビン係数, ビリルビン比の値から, 馬の血清ビリルビン値は, 次の方法で簡易に算出することができる.総ビリルビン値(mg/dl)=黄疸指数×0.200……(1)間接ビリルビン値(mg/dl)=総ビリルビン値×0.702……(2)直接ビリルビン値(mg/dl)=(1)-(2)6.以上の所見より, アセトン法による馬の黄疸指数は, 著しく正確となった.従って著者の仮称する総ビリルビン係数及びビリルビン比とともに, 馬の臨床診断上, 極めて意義を有するものと考える.
- 鹿児島大学の論文
- 1968-02-15
著者
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