牛の分娩後に発する疾病の予知について : 鹿児島県における調査

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牛の分娩後に発症する疾病を, 分娩前に予知できるかどうか検索するために, 分娩2カ月前の臨床的に健康な牛(乳牛81頭, 肉牛33頭)から採血し, 血清生化学的検査を行った.このうち, 分娩後に発病したのは上記の114頭中19頭で, すべて乳牛であった.疾病の内訳は, 分娩後起立不能症8頭, ケトーシス5頭, 二等乳分泌4頭, 関節の疼痛2頭であった.分娩2カ月前に行った血清生化学検査の成績は, 分娩後も健康な牛(正常値とする)と, 分娩後疾病にかかった牛に分類した.さらに疾病別に集計を行って正常値と比較し, 分娩後に発症する疾病を予知できる特有な変化が, 分娩2カ月前に認められるかどうか検討したが, 以下の結果が得られた.1.分娩後起立不能症 : コレステロールエステル比の減少, 遊離コレステロール量の増加.2.ケトーシス : マグネシウム量, アルブミン分画, A/G比, 総コレステロール量, コレステロールエステル比の減少, β-グロブリン分画, GOT活性, 総ビリルビン量の増加.3.二等乳の分泌 : カルシウム量, マグネシウム量の減少, ナトリウム量, 総コレステロール量, α-グロブリン分画の増加.4.関節の疼痛 : カルシウム量, 総タンパク量, コリンエステラーゼ活性値の減少.5.創傷性心膜炎 : この疾病は分娩2カ月前から分娩後までの本調査中には, 発症に遭遇しなかったため, 本調査以外の9頭の症例に関する検査成績を用いた.いずれも肉牛で, 臨床検査後まもなく廃用剖検され, 確定診断されている.アルブミン分画, A/G比の減少, α-, β-, γ-グロブリン分画, GOT活性値, 血漿フィブリノーゲン量(1,000mg/dl以上), 白血球百分比における好中球増加が認められた.白血球数は, 発病後まもなく著しく増加したが, その後は急速に減少し正常値と差は認められなかった.血漿フィブリーゲン量は, 本疾病発症後に増加が著しく, 有効な検査方法の一つである.この研究は文部省科学研究費補助金(No.386024)の助成により, 宮崎大学農学部獣医学科家畜内科学および外科学研究室と共同で実施した.
鹿児島大学の論文
1982-03-19

牛の分娩後に発する疾病の予知について : 鹿児島県における調査

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