腹腔内冷却による低体温麻酔下での循環停止に関する検討
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概要
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本研究は, 腹腔内冷却による低体温麻酔法を用いた循環停止法の可能性を検討するために実施した.Isofluraneによる維持麻酔下で, crushed iceを腹腔内に入れ低体温麻酔を開始した.食道温30℃に達した時点で, 開胸後, 左心房-大動脈バイパス(左心バイパス)を作製し, バイパス循環を行いながら冷却効率の向上をはかった.食道温20-23℃の時点でYoung液をバイパスカテーテルを介して大動脈基部に注入し, 心臓を停止させた.約20分の循環停止の後, 左心バイパスを再循環させ蘇生を行った.拍動が安定したところで積極的に腹腔内を加温し, 30℃まで復温させ, 閉胸, 閉腹した.術後は保温マットにより38℃まで復温させた.冷却-循環停止-復温期間を通じて血行動態および血液ガスの分析を行った.18例中11例において覚醒と順調な術後経過が得られ, 覚醒が不可能であった7例では, 覚醒したものと比較して蘇生中のPaO_2が低値を示していた.一方, 血行動態の変化と冷却, 復温効率には有意な変化は認められなかった.以上のことから, 腹腔内冷却による低体温麻酔法を用いた循環停止法は, 循環停止中におけるアシドーシスの進行を遅延させることで円滑な蘇生および覚醒をはかることが可能であると考えられた.また, 冷却, 循環停止中においては心筋と同様に肺の保護が重要であることも示唆された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
著者
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藤木 誠
鹿児島大学 獣医学科 臨床獣医学講座 外科学分野
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坂本 紘
鹿児島大学農学部
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坂本 紘
鹿児島市立病院周産期医療センター
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金本 勇
茶屋ケ坂動物病院
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三角 一浩
鹿児島大学農学部家畜外科学教室
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金本 勇
茶屋が坂動物病院
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藤木 誠
鹿児島大学農学部
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三角 一浩
鹿児島大 農
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三角 一浩
鹿児島大学 農学部 家畜外科学 教室
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藤木 誠
鹿児島大学農学部獣医学科
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三角 一浩
鹿児島大学農学部獣医学科
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坂本 紘
鹿児島大学医学部付属病院薬剤部農学部獣医学科
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