漁業練習船南星丸が放射する水中音
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概要
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平成14年度に鹿児島大学練習船南星丸が建造された。本船は学生,研究者を乗せ各種調査及び実習を行っている。その一環として,世界の水産生物資源量調査の指標の1つとなっている計量魚群探知機を使用しての調査も実施されている。同魚群探知機は,船底より垂直方向に超音波ビームを発射するものであり,魚類等海洋生物が船舶からの放射水中音に驚き,当該船舶から遠ざかる逃避行動をとるとするなら,船底下に存在する魚類等は減少し,資源量を少なく評価する危険性がある。そこで南星丸が放射する水中音の実態を把握し,計量魚群探知機等を使用するに当たって,精確な資源量推定のための基礎資料を得ること目的として,放射水中音の測定を実施し,次のような知見を得た。(1)漂泊中,船底直下10mの距離において,音圧レベルは平均143dBであった。主機関回転数の違いならびに発電機関駆動の有無による音圧レベルの有意な差はみられなかった。(2)航走中,南星丸から水平距離30m離れた点において,Dead slow aheadの149dBを除き,今回の各種条件下での全測定において150dB〜153dBの値を示した。Full aheadで航走するとき,魚を驚かせると推定される音圧レベルの130dBとなる距離は約380m,140dBとなる距離は約120mとなった。遊泳する魚群はこれらの距離から逃避行動を起こしている可能性があることに注意しなければならない。(3)漂泊中の放射水中音スペクトルは,主機関と発電機関それぞれの基本周波数に相当する高次倍音の線スペクトルが卓越した。(4)前進航走中の放射水中音スペクトルは,200Hz付近以下の周波数帯域に,プロペラ回転によって生じるキャビテーションや乱流による連続スペクトルと,プロペラ軸から発する線スペクトルが卓越し,両者が混在するパターンを示した。(5)後進航走中の放射水中音スペクトルは,(4)に比し,後進中には150Hz付近までで,かつ連続スペクトルは線スペクトルよりレベルが小さい傾向を示した。(6)バウスラスター作動中の放射水中音スペクトルは,約100Hz〜350Hzにかけて凸状の連続スペクトルが現れる分布パターンを示した。最後に,この測定を行うに当たり,協力いただいた当時環境情報科学講座大学院生の高嶋明子氏,同講座学生の田村彩氏及び南星丸乗組員に感謝する。
- 2005-12-27
著者
-
日高 正康
鹿児島大学水産学部
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松野 保久
鹿児島大学水産学部環境情報科学講座
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幅野 明正
鹿児島大学水産学部
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東 政能
鹿児島大学水産学部附属練習船南星丸
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幅野 明正
鹿児島大学水産学部附属練習船南星丸
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日高 正康
鹿児島大 水産
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中武 利郎
鹿児島大学水産学部練習船南星丸
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東 政能
鹿児島大学水産学部附属練習船かごしま丸
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東 政能
鹿児島大学水産学部かごしま丸
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松野 保久
鹿児島大学水産学部
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東 政能
鹿児島大学水産学部
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