文章題の解答分類コード作成と誤りの検討 : 四則演算の習得型による文章題解答傾向の差異
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概要
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義務教育における学業遅進児童生徒の問題が,学業面のみでなく学校生活への適応全般のいろいろな面からとりあげられて久しい。我々は,学業不振を「当該学年に期待される学力を有しないこと」と定義し,主として算数の学力について,既存の測定手段でとらえた学力を比較検討することから,学業不振を考えてきた(三浦ほか,1985)。学業不振児童へ効果的な学習指導を行うためには,標準学力テストや学業成績のように個人の学力の水準を測るのみでなく,特定個人の現在の学力の特徴を診断する,すなわち,どのような知識や操作が未習得なのかを測定するための方法を開発する必要があると考える。そこで,小学校の学習指導が終了した時点での基礎的計算能力の実態を把握するテストを作成し,調査を実施した。基礎的な四則演算計算問題の正答率は平均約80%と高く,整数の演算では90%を超えること,学力の高低により誤答のタイプが異なることが示唆された(斎藤ほか,1991)。その後の調査では,低学力児童は"どのような四則演算計算問題なら正答できるのか"分析したところ,低学力児の誤答は分数の操作・小数点移動などの特定の操作を必要とする問題に偏っており,分数操作未習得・位取り操作未習得など典型的な解答の特徴をもった型を抽出することができた(井山ほか,1993)。更に,"どのような演算操作の誤りをおかすのか"を検討するため,計算過程において生じた誤りの種類を分類するコードを作成し,分析をすすめた。その結果,典型的な習得型の誤答の種類は,未習得の演算操作の特徴と対応しており,偶然生じた誤りによる誤答ではなく,演算操作未習得の故の誤答であることが示された(渋谷ほか,1994)。このことは,低学力児童には未習得な演算操作があり,それに対応した誤操作が固定しており,学業不振改善には特定の未習得操作の補償が有効であることを示唆していると言えよう。しかし,四則演算計算操作を習得していても学業不振でないとは言いきれない。そこで,我々は,文章題を含めたより総合的な学力を測るテストを実施した。児童の学力の全体的な傾向として,文章題の正答率が学業成績や標準学力テストの水準と関連していること,内包量や割合の問題の中にはかなり正答率の低いものがみられることなどを,調査の基礎集計結果として報告した(三浦ほか,1993)。今回の調査では,文章題の誤答の種類,すなわち"どのような誤りをしているか"の分析を行う。そのため,問題の解決過程に沿って,過程毎に生じる誤りの種類をあらわし,調査した14問に共通する解答分析コードを作成する。さらに,四則演算計算操作の習得状況と文章題の誤答の種類との間に関連がみられるのかどうかも検討する。
- 千葉大学の論文
- 1995-02-28
著者
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