学習性無力感に関する研究 : その4 達成場面での肯定的・否定的感情喚起が遂行に及ぼす効果
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概要
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本研究では,パーソナリティ変数としての学習性無力感と,課題遂行の直前に喚起した肯定的ないし否定的感情が,達成場面での遂行水準にそれぞれどのような影響を及ぼすかを検討した.被検者は大学生の男子72名,女子102名,計174名であった.無力感の測定には,先行研究において作成され,信頼性・妥当性の保証された41項目から成る無力感尺度を用いた.また課題の遂行前に肯定的または否定的感情を喚起するため,達成場面での成功または失敗を描いた文章をそれぞれ5つずつ提示し,その場面を自分の体験としてできるだけ具体的に思い浮べるように教示する方法をとった.遂行課題としては,4・5・6文字の日本語のアナグラム計30語を用い,10分間で解答させた.アナグラム得点を従属変数とし,性別(男子・女子)×感情条件(肯定的・否定的)×無力感(高・低)の3要因間の分散分析を行ったところ、アナグラム総得点では性別の主効果と性別×感情条件の交互作用が,またアナグラムの項目別得点では4文字項目で性別×感情条件の交互作用が,6文字項目では性別の主効果が有意と認められた.次に無力感尺度得点を従属変数とし,性別×感情条件×アナグラム総得点(高・低)の3要因間の分散分析を実施したところ,性別×アナグラム得点の交互作用が認められた.以上のように,感情条件と遂行水準,遂行水準と無力感のいずれの関係にも性差が関わり,かつ無力感における性差も有意に近い傾向があったことから,男女の無力感のタイプの違いについて考察した.また無力感研究における課題の適切さについても問題提起がなされた.
- 早稲田大学の論文
- 1988-03-25
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