学習性無力感に関する研究 : その5 : 自己と他者の遂行期待とその判断要因
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概要
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無力感が自己と他者の遂行の予測に及ぼす効果を因果帰属理論の枠組で検討するため,大学生男女353名を対象に以下のような実験を行った.課題の困難度(好成績を得るのが容易な科目と困難な科目のいずれか)を設定した上で,受講者8名の能力の優劣(昨年度の「A(優)」の数),同じく努力の多少(一日の勉強時間),同じく運の良悪(ヤマの当たる確立),の資料を示して8名(他者)のその課題(科目)での成績を満点が100点として予測させた.また,自己については,資料の8名と同じ科目を選択したとして,昨年度の「A」の数,一日の平均勉強時間,今までにヤマの当たった確立,を記入させた.さらに,その課題(科目)を選択したとして何点取るかの予測をさせた.結果は,自己他者別及び課題の難易別に,得点の相違を分散分析し,さらに「能力」「努力」「運」と得点の相関係数,偏相関係数,重相関係数を取り比較された.主な結果は,以下の通りである.(1)無力感の高低は,遂行予測には反映されず,課題の難易度が遂行予測と関係し,容易な課題のほうが高い予測をする.(2)自己と他者の予測では,課題が困難な場合のみ他者が自己より高い.(3)困難課題で無力感が高い自己の場合を除くと遂行予測の判断に「努力」が関与することは少ない.(4)自己に関しては,無力感の高いほうが遂行予測の判断に「努力」の要因を重視する.(5)無力感の低い場合は,遂行予測の判断に「能力」と「運」の要因を重視し,「努力」要因の関与は少ない.こうした結果は,従来の無力感に関する諸研究の結果とは異なり,「無力感への抵抗力」は,「努力」要因より,むしろ「運」要因との関係が強いことが示唆された.
- 早稲田大学の論文
- 1989-03-25
著者
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