学習性無力感に関する研究 : その8 解決不可能課題遂行後の快・不快刺激の提示が後続の課題遂行に及ぼす効果究
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概要
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本研究は,学習性無力感の実験事態で,前処置課題終了後に快または不快刺激を与えることが,後続の課題遂行にいかなる効果を生むのか,また前処置課題(解決不可能課題〜失敗課題)終了時の帰属および帰属スタイル(複数の帰属の組み合わせ)が後続課題(解決可能課題)にどのような影響を与えるのかについて検討することを目的とした.被験者は,男子大学生30名で,実験は被験者をランダムにN群(騒音群),M群(音楽群),C群 (統制群)の3群に分け,個別に行なわれた.実験は,(1)前処置課題(2)帰属の測定(3)快または不快音の提示(4)後続課題(5)帰属の測定,以上5相のプロセスから成っている.群による実験条件の相違は,(3)の快または不快音の提示以外はない.前処置課題と後続課題は,各々10問の計算課題で4つの数字の間に加減乗除の記号を入れて指定の答を出させるというもので制限時間は10分である.前処置課題は,10問のうち5問は解決不可能な課題であり,後続課題では10問すべて解決可能な課題であった.帰属は,Petersonらの(1980)ASQ (Attributional Style Questionair)に基づいて本実験用に修正したものを用いた.修正されたASQは,本質的にはASQと同じで,統制の位置,安定性,全体性,など(例,コントロール感)が測定できる.快・不快音の提示は,音楽(ショパンのノクターン)・騒音(ホワイトノイズ)を各々2分間であった.統制群には瞑目させるだけで何も音刺激を与えなかった.主な結果と考察は,以下のようであった.(1)音楽を聞かせることは,騒音を聞かせるより後続課題の遂行に有効ではなかった.むしろ有意ではないが数値上は,N群(騒音群)のほうが遂行成績が良かった.また,もっとも成績が悪かったのは統制群であった.これらのことから,前処置課題での不快体験の軽減には,後続課題との間に何らかの刺激,特に前処置課題とは別種の不快刺激を導入することが効果的であることが示唆された.(2)成功・失敗事態と帰属との関係では,前処置課 題(失敗事態)後のほうが後続課題より,内的統制が有意に高得点であり,安定性では後続課題後のほうが有意に高得点であった.今後,成功事態で内的統制が生じるようになる条件について検討する必要があることが示された.(3)帰属スタイルと課題遂行との関係では,失敗事態で内的,安定的,全体的な帰属をする者(無力感型)が,同じ事態で外的,不安定的,部分的な帰属をする者(非無力感型)より後続課題で課題遂行の成績が悪いという現象は見られなかった.むしろ,無力感型のほうが数値上課題遂行の得点が高いことがみられた.この原因については不明であるが, ASQの妥当性が保証されていない現段階では,少なくも独立変数として扱うことには問題があることが指摘された.
- 1992-03-25
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