注視点マスキング法による文字情報獲得機構の分析(<論文小特集>生体計測応用)

概要

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読書中の眼球運動を調べることは, 人間の脳内での情報処理過程の解明に有益な知見を与えると考える.すでに我々は, 注視点での視覚情報処理と眼球運動の関係を明らかにするために, 注視点マスキング法を提案している.本論文では, 日本語文章の読み取りに着目し, 注視点マスキング法を用いて, 漢字かな混じり文章から誤字検出する実験を行い, 誤字検出率と眼球運動から人間の文字情報の獲得特性を分析した.その結果, マスク開始時間よりマスクサイズの影響が大きいことから, マスキングまでの提示時間が33msでも視覚情報を獲得できるが, マスキングにより獲得した視覚情報の処理課程においての影響が現れることが示された.また, 注視時間分布より, マスク画像をトリガにできるだけ視線を避ける行動が観察され, 視線を動かすのに約130ms要することが示唆された.英文の再認テストに対して, 同様にマスキング実験を行ったRaynerらの結果とは, 注視時間等は変化しないという報告と相違したが, この違いは, 誤字検出という課題の違いだけでなく, 日本語文が英文に比べ, より複雑な情報処理を必要とすることを示唆するものである.
1996-12-20